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第6話

 一連の流れから、疲れて眠りに落ちた俺が目覚めると、泉原はもうシャワーを浴びたのか、ラフな部屋着姿で、濡れた髪をタオルで拭っていた。 「竜司もシャワー浴びなよ」  その誘いに頷き、ぼんやりと下の階に案内されて、ぼうっとしたままシャワーを浴びる。 (本当に、俺は、泉原と……)  なんだか夢を見ているようで、頭をはっきりさせようと、冷たい水で幾度も顔を洗った。タオルを巻いて二階に上がると、泉原がトレーナーを差し出してきた。 「洋服、貸そうか? 風呂上がりでいきなり制服じゃ暑苦しいだろ」  そんな気遣いに、俺は笑いながら首を横に降る。 「いいよ。お前の洋服じゃあ、俺には大きいし」 「でも竜司と俺って、服のサイズ同じじゃね? 竜司がいっつも背中丸めてるから、竜司の方が背丈低くみえるだけで」 「その……竜司、って呼び名、学校内では使うなよ」  俺はもそもそと制服を着ながら、泉原に忠告する。 「なんで? お前の名前は竜司だろ?」  いかにも泉原らしい答えに、俺は笑いながら泉原の頭を軽く叩いた。   「またクラス連中にからかわれるだろうが。昨日まで苗字呼びだったのに、いきなり名前呼びになれば、なんかあったんじゃないか、って疑われるだろ」 「実際、なんかあったじゃん」  そんな言葉を投げられて、言葉に詰まった。 「それは……黙ってれば分かんねーだろ」 「竜司が俺を裏庭から連れ去ったのも?」  さらりと言われて、とたんに恥ずかしい記憶が蘇った。泉原って、こんなからかう奴だったっけ?  「それはっ、我慢出来なかったんだよ! だってお前、俺の事だけ庇って、自分ばっかり悪者にしようとしてただろ?」  必死で訴えると、 「大丈夫だって。俺が上手く口止めしておくよ。それから、名前呼びが嫌なら呼ばない」 俺の頭をぽん、と叩く。洗い髪で冷えた頭皮に、泉原の掌の温もりを感じた。 (こいつ、やっぱり大人なんだな) なんだか今まで泉原に抱いていたイメージが吹き飛んだ一日だった。 「だけどさ、ふたりきりの時には、竜司、って呼ばせてよ。あと俺の事もさ、康太郎、って呼んでよ」 俺の頭に掌を乗せたまま、泉原は首を傾げた。 「まあ……構わねーけど」  いきなり「康太郎」って呼んだのは俺からだし。すると泉原はにこにこと満面の笑みを見せる。 「なにをそんなに喜んでんだよ?」  頭上から掌をどけると、もっと明るく笑った。 「そしたらさ、ふたりきりの時間がもっと楽しくなるじゃん」  そうか。俺と泉原は、これからも真面目な恋愛をするのか。  さっき泉原と繋がった快感から、俺の身体は泉原を求める。それは泉原も同じだろう。互いに身体を求めあうのも「真面目な恋愛」には重要か。  いろんな奴等から噂になっても、堂々としていれば逆に怖くない。  放課後にはまた、誰もいない教室でふたりきりで過ごすのか。  今までとは違い、恋愛にわくわくしている自分が面白くなり、俺は微笑む。  そうして、変わらない笑顔の泉原と一緒に、ふたりで笑った。  

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