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第4話

 目を覚ますと、ミロが微笑みながらこちらを眺めていた。始めの頃はそれだけで飛び起きていたものだが、今ではすっかり慣れてしまったのだから不思議だ。 「おはよう、カイト」 「おはよ」  ゆっくり起き上がると、自分が全裸であることに一瞬息を飲む。そして昨日の情事を思い出して顔が赤くなるのを感じた。  ついにセックスしてしまったことに気恥ずかしくなるが、ミロは大して照れていないようで「体は平気か?」などと聞いてくる。体を確認するが、特に違和感もない。熱も引いているようで、初めての発情期は一日で終わったようだった。  けれど、自分の指を見て首を傾げてしまう。 「これは?」 「気に入ってくれた?」  左手の薬指。そこには昨日はなかったはずの、シルバーの指輪が嵌っていた。よく見ると、中央にエメラルドグリーンの宝石が付いている。 「これ、王家に代々伝わる結婚指輪なんだ。中央に翡翠石が施されている」  そう言ってミロが左手を掲げると、彼の薬指にも同じ指輪が嵌められていた。予想もしなかったことに咄嗟に反応ができず、まじまじと指輪を見つめてしまう。  翡翠なんて高級なもの初めて見た。もしかして、翡翠国の名前の由来って……。  海翔はミロの顔をじっと見る。美しい金髪に、エメラルドグリーン、いや翡翠色の瞳だ。 「ミロの瞳と同じ色だな」 「そうだよ。王族の直系はみんな翡翠色の瞳をしているんだ。今はもう私しかいないんだけどね……」  そう言って彼は顔を伏せる。今は亡き先代のことを思っているのだろうか。  海翔はそんなミロの体を思い切り抱きしめた。 「ありがとう。大切にする」 「はは、気に入ってもらえてよかった」 「それから! 翡翠色の眼は、これからもっと増えるからな!」  ぶっきらぼうに叫ぶと、ミロは「え?」と首を傾げた。海翔は体を離して鼻を擦る。 「だからっ。俺が! お前の子を産むからっ。そしたらその子の眼も同じ色なんだろ?」  ミロは目を見開き、そしてふわりと笑った。ぎゅっと抱き寄せられて顔中にキスの雨を降らせる。 「ああ、そうだよカイト! 私たちの子供、たくさん作ろう!」  そうして再び子作りに没頭したせいで式典がギリギリの日程になってしまったものの、無事に開催され海翔は国民に温かく受け入れられた。  その式典の合間に海翔は再び元の地球へ飛ばされることになったが、左手薬指の翡翠は変わらずに輝いていて、あの夢の様な日々が夢ではなかったのだと悟った。近いうちにまた翡翠国に行けるのだと、信じて疑うことはない。  波乱万丈な彼らの結婚生活は、まだ始まったばかりなのだから。

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