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第1話

夜な夜な夢に見るは、幼き頃の夢。 あれは月の綺麗な晩・・・ 金色の髪を夜風に棚引かせ、手招きする。 あれは何だったのだろうか? 人なのか妖なのか・・・ 夢なのか、現実なのか・・・ まだ幼き頃の寝物語だったのか・・・ 未だに区別はつかない。 ただ、あの金色の髪を夜風に棚引かせた姿に魅入られ夜毎探してしまうのだ。 月の光に照らされて金色(こんじき)に輝く姿は忘れることなどできない存在であった。 今まさに、目の前にいる彼にとてもよく似ていたような気がする。 今宵初めてあったはずなのに・・・ そして彼は僕の耳元で囁く。 《お前を迎えに来たのだ》 とても素敵な声で僕を惑わす。 そんなはずはない・・・ 誰も迎えになど来ない。 それは僕が一番知っている。 金色(こんじき)の鬼よ、どこにでも連れて行くがいい。 僕は誰にも望まれていない。 お前が僕を望むなら、おまえについて行こう。 そうすれば、もう辛い毎日から解放されて幸せかもしれない。 いや、そんなはずはない。 解放されても、また僕を縛る鎖が変わるだけだろう。 《さぁ、連れて行くがいい、お前が望むなら僕をお前に全てあげるよ》 その声に金色(こんじき)の鬼が答えた。 《分かった、お前の望みを叶えよう》 そして、その日を境に僕はこの里の住人となった。 金色(こんじき)の鬼の花嫁として。

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