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第2話
今僕がいるこの里には金色の鬼がいる。
その鬼はとても優しく皆に慕われていた。
そして僕は金色の鬼の花嫁。
この里に住む皆が優しくしてくれた。
《なれたか?》
「はい、皆が優しくしてくれて、こんな僕を受け入れてくれてる。」
《お前はお前だ。皆、わかっている。お前が優しい人間だと・・・。だから、自分の事をそんな風に言うな。》
優しく僕に言う。
僕に触れる事はなかった。
花嫁とは名ばかりで、この屋敷にいてもいいのかと思ってしまう。
この屋敷の使用人頭の島岡から『花嫁は男女関係なく屋敷にいるだけで良い存在』なのだと聞かされた。
あの日以来、金色の鬼には会ってはおらず僕にとっては初めて味わう安らいだ時間が流れていた。
人の世で生きにくかった僕にとって、鬼の側はなんと居心地がいいのかと夢を見ているような日々。
「タクミ様。本日、主人が帰って参ります。お迎えの準備をさせて頂きますね。」
そう告げると島岡が部屋へと入って来た。
手には真っ白な着物を持って
「今宵は婚礼・・・ご準備を・・・」
また告げ、部屋をでて行った。
代わりに侍女達が入って来て支度を整える。
今宵・・・
僕は、金色の鬼に嫁ぐのだ・・・
正真正銘の花嫁となる。
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