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第22話 (第2部)

毎夜、同じ夢を見て目が醒める。 フワリと優しい気持ちだけが胸に広がっている。 そして、思い出すのは金髪碧眼の綺麗な男。 時代がかった衣装を纏って、大きな犬を2匹従えている。 その周りにはワラワラと小さな子供たちが戯れていた。 横たわる僕に花を供えて、その男が見つめる瞳は優しく温かかった。 目が醒める間際に何かを言っていたが思い出せなかった。 とても懐かしく恋しい、そんな言葉で表すのが一番正確な表現だと思う。 そんな優しく懐かしい気持ち。 今、僕は平成の時代に生きている。 現実は夢のようには行かない。 厳しすぎる現状に頭を抱えていた。 「どうしようかな・・・」 あの日、辞めてしまったバイオリンをまた手にする日が来るなんて思いもしなかった。 確かに、バイオリンは嫌いで辞めたわけではない。 だからと言って、上手かったわけでもない。 なのに、何故、僕なのだろうか? 不思議でならなかった。 須田先生の所で、また一からバイオリンを習い出したのは3ヶ月前。 兄がバイオリンを片手に帰って来て、僕にこう言った。 「タクミ、またバイオリン習ってくれないか‼︎」 それは断ることのできない兄からの命令だった。

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