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第9話
あれからどの位、唇を…舌を求めただろう?
俺は口から糸を延ばし、離れた旦那様の唇から瞳へ視線を移した。
するとそこには俺を狙う、旦那様の肉欲を求める瞳があった。
「…テュラ…その、寒くないか?」
「旦那様と居るから平気ですけど、離れると寒いです」
「では温めさせてくれ…」
そして旦那様は俺を抱きしめ背中を撫でながら手は腰を擦り、そのまま尻を撫でてその双丘を開きアナルを解し始めた。
俺は旦那様にしがみついて、全て任せた。
後ろを解されながら俺は期待と触れられる喜びが高まり、自然とペニスが上向いて透明な涎を何度も零した。
床に寝転ぶ旦那様の上に跨り、支えられながらその立派な体躯に見合った長大なペニスを解されたアナルに受け入れた。
俺が寝転ぶと翅が痛むし、床に触れさせたくないと言われての…騎乗位になったのだ。
「…は、ぁ、…あ…旦那様ぁ」
嬉しくて涙が滲んで、声が掠れる。
「…ここは、名前を呼んでくれ」
「ぁ、あ…、クーテオン様」
「"様"も要らない」
「クーテオン…?」
「そうだ。テュラ。そう呼んでくれ」
名前を許された事に歓喜で翅が震えて大きく広がる。
「薄翅が七色に輝いて、綺麗だ…テュラ…」
「クーテオン…」
言いながら眼下の彼の逞しい胸に震える両手を着く。
彼に跨って、もたらされる快感に歓喜の波が終わらない。
ずっと欲しかった。求めてた。
だから、手を伸ばした時…
「クーテォ…っ、ぁ、あっ…!」
「テュラ、テュラ」
…手を、掴んで欲しかった…。
「んンッ! ふぁ…ぁ、ああっ! んぅ、ん!!」
深く、深く、クーテオンが俺の内部に刺さる。
そこは彼の場所だ。
…もう、そこは彼だけの場所だ。
そして、この涙は彼だけに流す、俺の心だ。
翅が震える。
感情が、翅に宿り色彩を放つ。
薄翅人の翅は歓喜する心に敏感だ。
「クーテオン好きです。雇われた夜、マーキングを受けた時から、ずっと…」
エルンの身代わりでも良い…と思うくらいに。
貴方が俺に触れて、俺が貴方に触れられる理由がそれでも構わないと…。
使用人として見つめ続けて終わると思ったのに、突然突き放されて…悲しくて悲しくて。
でも、今は違う。
「テュラ…」
俺を呼び、求め、掴んでくれる。
「俺もお前が好きだ。あの夜より前の出会いから、お前だけが…」
俺の告白に同じく答えてくれたクーテオン。
その内容が嬉しい。
俺の腰にクーテオンの尾が巻き付く。
艶が有り美しい縞の尾が、俺を引き寄せる。
俺はその尾の力に身を任せ伸び上がり、クーテオンに口付けた。
―…そしてお騒がせな俺は結局屋敷に戻り謝罪し、仲間達から温かく許され…家紋入りのエプロンを腰に巻いたのだった。
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