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第8話
小屋…? 俺は川に落ちたのでは…?
「目を覚ましたか、テュラ」
「御主人様…」
俺は御主人様のマントの上に裸で寝せられ、同じく裸の御主人様に抱きしめられていた。
意識が戻った俺を強く抱きしめ、「報告を受けた屋敷を辞める事は許可しない!」と唸る様に言い俺の瞳を見ながら口を開いた。
「所有のマーキングをした日以来…お前が成人するのを…ずっと我慢して待っていたんだ、テュラ!」
「…ぇ?」
そして始まった話の内容に俺は衝撃を受けた。
「お前の部屋は今日から俺の隣り…行く行くは同じ部屋に…だな…」
「…え? エルンは? だって、エルンとは…その、夜の関係、を…」
「夜の関係!? …テュラが想像している"そういう関係"は一切無い!」
「!?」
「いつも俺を押さえつけるエルンが屋敷に居ない時、我慢できなくて…お前を暗がりに連れ込んだんだ。
そして、俺の行為に嗚咽を手で抑えて耐えるお前に無理矢理…む、むりやり…。
涙して震えるくらい嫌悪を露にしているのに、俺は耐え切れなくて何度も求めてしまった…すまない…」
「…ぇ」
「…お前は俺と一緒になるのが嫌で屋敷を出たのだろう…?」
「そ、そんな!? 俺は御主人様が嫌いなわけでは…!」
「…テュラ?」
「むしろ…その…行為では歓喜の震えに嗚咽と言いますか…あの、その…」
「…ならば、俺の事は好いている?」
「はぃ…」
「それなら、俺を"旦那様"と言ってくれ」
「…旦那、様?」
「そうだ。テュラ、それはお前だけに呼ばれたい」
「…お気に入りのエルンじゃなくて良いんですか?」
「エルン?」
「あんなに熱心にエプロンを何枚も贈っていたじゃないですか…」
「ああ、エルンからお前の事を色々と聞いたり、護らせたり…それの報酬でエプロンを…。
まぁ、メインは兄上がエルン宛に送ってくる物を渡す方だが」
え…そうだったんですか!
…と、言うか何で兄上様が?
「俺が渡す家紋入り…特別は、お前だけだ…テュラ」
「…!!」
「それにエルンは本当は本館を仕切る兄上に仕えているんだ」
「は!?」
「兄上が戦地に赴く時、エルンは未成年の使用人だったからな。俺が預かっていたんだ」
そ…そんな裏が…。
「"大事にしたいと本能で感じた者を自分付き、特別にしろ"と兄上に言われて、十九歳でテュラを見つけた時…決めたんだ」
「!!!」
「俺はテュラしか…。初めて求めた使用人はお前で、マーキング行為も初めてで…。
…か、加減が全く出来なくて、一目惚れしたお前にマーキング出来る事に一気に暴走したんだ…。
だからな、は、初恋が、テュラ…なんだ…」
―…何て事だ! 何て事だ! 何て事なんだ…!!
「ぉ、俺も…初恋…が…」
「テュラ…?」
「―…旦那様、です…」
お互い、言葉が出なかった。
でも、言葉の変わりに唇が重なって…舌を絡めて深く、お互いを近づけて…行為に没頭した。
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