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第253話
「…ぅ"、ん」
風呂場から運ばれて来たのは覚えているが、そこからぼんやりする。
多分、寝てたんだろうが腰が怠重い。
水分が足りないのか声を出し過ぎたのか、声が少し掠れてしまっていた。
喉…渇いた…
目の前のペットボトルに手を伸ばすが届かない。
伸ばした手は掠りもせず空を掴むばかりで、もう諦めようかと枕に顔を埋めた。
「水?」
上から降って来る声にそちらを伺うとペットボトルを手渡された。
のそりと起き上がり、キャップを開け様とするが握る手に力が入らず苦戦する。
長岡はそんな三条をひょいと膝の中に閉じ込め、キャップを緩く握る手に大きな手を重ね捻り口を空けてくれた。
「ほら。
飯作ったけど食ってくか。」
「カレーですか?」
「においでバレたか。
今ならなんと目玉焼きもおまけしちゃいますよ。」
悪戯っぽく笑う顔に胸がきゅんとする。
それなら母さんに連絡をしなければ。
でも、まだ時間も早いしもう少しだけこのままでも良いかな。
カラカラの身体に水が染み渡たる様に、長岡のぬくもりが心にまで染み入る様で心地好い。
三条は安心した様に目を閉じた。
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