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第256話

テストの束を持って教室に入ると生徒達はソワソワしだす。 点数が気になるのが痛い程解る。 自分もそうだったと毎回懐かしく思ってしまうのは年をとったせいだろうか。 「テスト返すぞー。 青山」 「はーい」 「五十嵐」 「ここはこうなるから正解はウ。」 進学校なだけあって酷く落ちこぼれた生徒はいない。 落差は確かに激しいが1学年だからか。 教育実習を除けばはじめての赴任先だが、真面目な生徒が多い印象は赴任当初から変わらない。 とは言っても、所謂ガリ勉ばかりではなく吉田の様におちゃらけながらも勉強はしっかりするタイプや、部活動推薦もいる。 当たり前だが色々な生徒がいて面白いなと思った。 「だからイ。 この問題はミスが目立ってました。」 黒板に向かう自分の背中に感じるあの目。 どう歪むのかはっきり思い出せる。 自分を呼ぶ甘い声。 昨日したばかりだが早く弄り倒したい。 またぐちゃぐちゃにしたい。 邪な思いにチョークが折れた。

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