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第323話
「お風呂、ありがとうございました。」
廊下からぺたぺた足音が聴こえ、振り向くと遥登が顔を出す。
濡髪に上気した肌
無防備な姿を晒していた。
…誘惑出来るたまじゃねぇ
無自覚なのか
仮にも恋人の部屋に泊まりに来て…
ポタ…と滴が肌を伝いシャツに吸い込まれた。
読んでいた本にスピンを挟み、ソファのスプリングを軋ませ立ち上がる。
「…風邪ひく。
ちゃんと乾かせ。」
「わっ、わっ、」
首から下げていたタオルでわしゃわしゃと髪の水気を取ると、力負けしている三条はふらふらと必死に脚に力を入れていた。
ちょっと待ってろと洗面所からドライヤーを持って来ると、ソファに腰を下ろし脚の間に座らせる。
「自分で出来ます…っ」
「俺がしたいんだよ。
甘えろ。」
何回しても脚の間に座るのは恥ずかしがって逃げようとするので、有無を言わさず腰を引き寄せドライヤーのスイッチを入れた。
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