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第354話
体操着を着た全校生徒が体育館に集合する。
わいわいがやがやと楽しそうな声に生徒指導主任は咳払いをした。
言外に静かにしろと言っている。
まだ緊張感に包まれている1学年は除いて、いくらか声は収まるがその咳払い届かない3学年に主任は遂に声を出した。
「静かにしろ。
1回しか説明しないからな。」
その声に漸く収拾がついた体育館を静寂が包む。
初めから声を出した方が早いと思うのだが。
三条は不意に視線を巡らせた。
体操着の生徒達、スーツや仕事着の職員達。
なんだかそのアンバランスさが妙におかしい。
静かな体育館内でふとそんな事を思ってしまう。
名簿順に整列し、腰を下ろすともう1つ咳払いをした。
「1年生は、聴力から。
2年生は視力。
3年生は身体検査。
そのまま繰り上がりで回る事。
サボらない抜け出さない、それが守れれば多少の事には目をつぶるけど廊下は走るなよ。
聴力検査に影響するからな。
後は、臨機応変に空いてる所に並んだり時間を有効活用してな。」
やっと教師の長い話が終わり、固い床から立ち上がる。
「三条、視力検査第二体育館だろ。
行こうぜ。」
「うん。
視力落ちてなきゃ良いな。」
「わかるー。
目触んの怖ぇしコンタクトは無理。
かと言って俺、眼鏡似合わねぇし現状維持でBであってくれ。」
「現状維持大切だよな。」
後ろからやって来た田上と吉田と人波に身を任せ、反対側にある第二体育館へと向かった。
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