354 / 1273

第354話

体操着を着た全校生徒が体育館に集合する。 わいわいがやがやと楽しそうな声に生徒指導主任は咳払いをした。 言外に静かにしろと言っている。 まだ緊張感に包まれている1学年は除いて、いくらか声は収まるがその咳払い届かない3学年に主任は遂に声を出した。 「静かにしろ。 1回しか説明しないからな。」 その声に漸く収拾がついた体育館を静寂が包む。 初めから声を出した方が早いと思うのだが。 三条は不意に視線を巡らせた。 体操着の生徒達、スーツや仕事着の職員達。 なんだかそのアンバランスさが妙におかしい。 静かな体育館内でふとそんな事を思ってしまう。 名簿順に整列し、腰を下ろすともう1つ咳払いをした。 「1年生は、聴力から。 2年生は視力。 3年生は身体検査。 そのまま繰り上がりで回る事。 サボらない抜け出さない、それが守れれば多少の事には目をつぶるけど廊下は走るなよ。 聴力検査に影響するからな。 後は、臨機応変に空いてる所に並んだり時間を有効活用してな。」 やっと教師の長い話が終わり、固い床から立ち上がる。 「三条、視力検査第二体育館だろ。 行こうぜ。」 「うん。 視力落ちてなきゃ良いな。」 「わかるー。 目触んの怖ぇしコンタクトは無理。 かと言って俺、眼鏡似合わねぇし現状維持でBであってくれ。」 「現状維持大切だよな。」 後ろからやって来た田上と吉田と人波に身を任せ、反対側にある第二体育館へと向かった。

ともだちにシェアしよう!