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第573話

「かわいー。 わぁ、三条くんそっくり。 三条くんの弟とお友達? 中学生?」 「こんにちは。 5年生です。」 女子達は小学生に群がりはじめた。 女兄弟のいない優登は戸惑いながらも何時もの様ににこにことしている。 小さくても男だ。 「三条?」 「びっ、くりした。 先生、驚かさないでください。」 「驚かせたか? 悪かった。」 声をかけた長岡は、三条の横からひょっこりと顔を見せる三条によく似た、けれど大分小さな少年に視線を合わせた。 女子生徒に撫でられながらも自分を見上げるその顔は教え子によく似ている。 「三条の弟か。 こんにちは。」 「こんにちは。」 遥登も犬っぽいが、弟も犬っぽいな 見た目もそうだが中身も犬だろうな よく似ているが人懐っこそうな顔は兄とは少し違うか、なんてぼんやり考えているとそういえばとポケットの中を思い出す。 長岡はポケットを漁ると小さな紙切れを2枚取り出すと優登の前に差し出した。 「良かったらこれどうぞ。 けんちんうどんとカレーの前売り券です。 体育館行ったら食べられますよ。」 「良いんですか? お兄さんの分は…」 「構いませんよ。 折角遊びに来てくれたんですから、お友達とどうぞ。」 手に握らせると、くりくりした目が長岡を正面から見据える。 「ありがとうございます!」 笑った顔は特によく似ている。 きっと三条が小学生の時もこんな感じだったんだろうなと容易に想像出来るその笑顔に長岡も笑顔で頷くと兄が口を開いた。 「先生良いんですか。 お昼は…」 「ここで食うから気にすんな。 まだあんだろ?」 「ありますけど…」 「売り上げに貢献するよ。 ソーキソバ1つな。」 気にするなと笑いかければ、困った様に笑う三条。 真っ直ぐな目は曇りがなく綺麗で兄によく似ているが、兄とは違う。 矛盾している様だが当たり前の事。 似ているが遥登は遥登だ。 かけがえのない、かえることが出来ない存在。 丸い頭部を眺めながらそんな事を噛み締める。

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