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第572話

ぐるぐると校内を練り歩きやっと戻って来た教室はそこそこに繁盛していた。 もの珍しさやネタとして案外ゴーヤージュースが売れているのは意外だ。 三条達は、次の宣伝役と交代を済ませ教室内で雑務をこなしていく。 休憩はお昼前。 午後からは殆んどの生徒が体育館での催しを観る為、金品がなければ教室を無人にしても構わない。 毎年、生徒指導進路指導主任に社会科教諭の強面3人で行うバンドが人気でその時間帯は確かに客足は途絶える。 売れ残るより、売れる内に売っておきたい。 「三条ー。 今、手ぇ空いてる? お湯なくなりそうなんだけど沸かしてきて貰っていーかな。」 「わかった。 沸かしてくる。 1つで足りる?」  「おう。 こっちは大丈夫。 ごめんだけど、頼むな。」 ポットを片手に廊下へ出ると更に人が溢れ縫うように階段を降りていく。 やっと到着した調理室は、コンロの炎と人の熱気ですごい事になっていた。 ぼこぼこと沸騰する湯をポットに移し替える頃には汗が吹き出していた。 廊下に出るとしっとりと濡れた襟首が冷たい。 「ありがとうございました。」 「あ、兄ちゃん!」 「優登、来たのか。 一樹もありがとう。」 優登と何度も家に遊びに来た事のある一樹。 優登のゲームの特訓に付き合ってくれてるだけあって、何度か一緒に対戦をしたがゲームが上手い。 2人で電車を乗り継いで来てくれたのだろう。 それだけで十分嬉しい。 「来た。 兄ちゃんなにしてんの?」 「お湯の補充。」 「お湯使うの?」 「カップ麺あるんだよ。 ソーキそば。」 「お菓子は?」 「あるよ。 紅いもタルトとか沖縄限定の飴とか。」 「楽しみ! な、優登!」 楽しみとじゃれつく2人に三条もにこにこと嬉しそうな顔を見せ、教室へと戻っていく。

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