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第571話

秋晴れの中開催された文化祭。 準備に追われなんだかあっという間に当日を迎えた気がする。 「なぁ、これ誰得?」 「知らん。 女子が楽しそうだから良いんだよ。」 発言だけは男前だが、今の吉田の格好はだ着ぐるみだ。 更に段ボールをビニール紐で繋げた看板を肩に掛けて客引きをさせられている。 ビニールプールにジュースを冷やして、紙皿と紙コップ、割り箸、ポットにごみ箱の準備も万端。 レジ替わりの電卓に小銭入れ、必要なものはすべて揃えはず。 「はぁぁ、浴衣なら良かったのに…とか言ってたくせに現金なやつ。」 「浴衣な。 見たかったよなぁぁ…」 さっきの男前なままなら格好良いのに、田上の一言に何時もの吉田に戻ってしまった。 やっぱり吉田は吉田だ。 しゃがみこんで見たかったとぼやき始めた吉田に、三条と田上は顔を見合わせた。 「田上、余計な事言うなよ。 めんどくさくなっただろ。」 「ごめん…」 「吉田、知佳ちゃんのエプロン可愛いな。」 床の一点を見詰めていた吉田はその言葉に知佳ちゃんを見た。 お揃いのエプロンは個数が限られているから女子から優先で着用している。 勿論、知佳ちゃんも着用していた。 ジャケットを脱ぎカーディガンに清楚な丈のスカート、その上にエプロン。 吉田の好きそうな格好だ。 「可愛い…」 デレっとしながら、結局何時もの吉田に戻ってしまったが元気のない吉田よりはマシか。 「可愛いな。 んじゃ、知佳ちゃんの役にたてるように呼び込み頑張ろうぜ。」 「おっしゃ」 やる気の復活した吉田と田上と並んで校内を歩きだした。

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