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第608話
何時の間にかリビングにでていた炬燵に潜り込み、ごろんと床に転がって勉強をする。
本当に炬燵は人を駄目にする。
こんなにも魅了するのに、ここで寝てしまえば風邪を引いてしまう。
だけど、1度入ってしまえば動きたくない。
あったかくてずっとここにいたい
楽しかった就学旅行から一夜、頭のスイッチを切り替えた。
とにかく毎日手を動かす、頭を動かす。
毎週の様に長岡の元へ出掛けていても今の順位もキープしている。
それが出来なければ本末転倒だろう。
恋人は聖職者なのだから、色恋沙汰に現を抜かしてばかりもいられない。
少しでも並びたい。
隣に並んで恥ずかしくない様にいたい。
そんな思いを直接本人には言わないが心に秘めている。
前回のテスト結果は頑張った甲斐もあって順位も上がった。
あと上には数人しかいない。
それについて強く競争心はないが、嬉しくないと言えば嘘になる。
会いたいな
ノートに走らせていたペンを止め、カーペットに顔をくっつけたまま空を見上げる。
どんよりとした空だが、雨雪は降らないだろう。
正宗さんに会いたい
どんどん膨らむ思いに携帯に手を伸ばす。
担任ではなく恋人に会いたい。
炬燵から出たくないのは事実だが、それよりも恋人に会いたい方が強い。
「母さん、俺ちょっと出掛けてくる。
帰り連絡するから気にしないで。」
「はいはい。
気を付けてね。
いってらっしゃい。」
「いってきますっ」
返事が来るより先に自室からコートとマフラーを持ち出すとバス停へと向かった。
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