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第690話

「長岡せーんせっ」 「卒業おめでとうございます。」 「えへへ、ありがとー。 ねぇねぇ、今日位写真撮ってくれるでしょ? ね?」 賑やかな1棟2階。 そこは3年生教室。 教室から準備室に戻ろうとした長岡は胸に花を付けた女子生徒に左右を囲まれる。 今年も嬉しくて少し寂しい日がやって来た。 式典中大人しくスカート丈も元に戻していたし化粧もしていない、今日が最後だと今年も頷く。 「先生で良ければどうぞ。」 「陽菜、良いって! 撮ろう!」   女子生徒達は嬉しそうに笑顔を振り撒く。 この笑顔も今日までだ。 この生徒は現文が苦手で赤点ばかりだったが、なんだかんだ言いながら補習に真面目に通い再テストで平均点を取る根性のある生徒だった。 「次2人で撮ってもいい? 陽菜撮ってー」 何故か腕に抱き付いてくる肩よりも低い位置にある耳に届かないよう息を吐くと口角を上げる。 2学年のカウントダウンがはじまった。

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