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第692話
楽しい昼休み、友人達と他愛もない話で盛り上がっていると、教室の後方ドアから冷たい空気と共に担任が入ってきた。
一直線に三条の元へとやってくる。
「三条。
昼飯の最中に悪いな、少し時間あるか?
放課後で構わないんだ。
三条に合わせるから出来れば今日で。」
「あ、はい。
大丈夫です。」
「準備室にいるから、いい時に声かけてくれ。
頼むな。」
頷くと、すぐにじゃあなと去っていった。
恋人と違い担任は表情もかたく、感情が読みにくい。
というか、今日は特別仮面が厚いような気がする。
「三条が呼び出しって珍しいな。
なんかした?」
「さあ、なんだろ。
今日中って…なんかしたかな…」
「もう春休みしかねぇのにな。」
吉田は乳酸菌飲料をずずっと吸うと田上と頷き合う。
なんか悪い事したか…?
思い当たる節はない。
が、自分にはなくとも長岡にはあるのだ。
結局午後からの授業もぼんやりと考えながらモヤモヤとしたまま授業を終えた。
放課後、友人と別れコーヒーのにおいに満ちた準備室に顔を出すと、長岡はすぐに反応した。
「失礼します。
長岡先生いらっしゃいますか。」
「あぁ、三条。
隣、行こうか。」
隣、と進路指導室を指差した。
長岡はファイルを手に持つとノートパソコンの画面を見えないように傾け、暫く借りますと他の先生方に声を掛けて廊下に出る長岡に続いて進路指導室へと入った。
ただの空き教室に本棚と机、スチールの椅子を置いただけの空間。
なんとなく緊張するのは、目の前にいる長岡が険しい顔をしてるから。
何かを迷ってる様な、渋る様な顔に釣られてしまう。
何を考えてるんだろう
こんな顔はじめて見た
「寒いな。
暖房いれときゃ良かった。
今暖房入れるから、座りな。」
「あ、はい。」
腰掛けた椅子の冷たさがじわじわとスラックスを通して尻臀に伝わってくる。
カタン
目の前に暖房機の電源を入れた長岡が座った。
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