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第812話

すごく良い夢をみた気がするが思い出せない。 遥登の夢をみた気がする。 まだ眠い頭を覚醒させるべく起き上がるが、もうベッドが恋しい。 2度寝をしてしまわないように隣とを隔てる扉を全開にし、カーテンと窓を開けると涼しい風が身体を撫でる。 朝晩はまだ空気がひんやりしていて気持ちが良い。 昼間の暑さが嘘の様だ。 鈍った身体を上に伸ばすと部屋着のシャツが捲れ、腹が露になる。 遥登が頑張って着けてくれたキスマークもすっかり色が消えてしまっていた。 それは恋人も同じだろう。 んあー… ねむ でも、夢より本物に会いてぇな どんなにしあわせな夢だとしても、本物には敵わない。 あの子供体温程しあわせな温度はない。 あの笑顔よりしあわせになれるものはない。 無邪気な笑顔を思い出し小さく笑うと、身支度を調えに寝室に戻る。 スーツに着替え最後にネクタイピンを留めた。 朝食代わりにコーヒーを胃に入れ、もう一度鏡を確認してから部屋を出る。 見上げた空は青を濃くし、夏の空になってきた。 昼を想像するとげんなりするが、職場へと向かう足取りは軽い。

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