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第872話

「推薦の話きてんだけど、どうだ。 成績も内申も申し分ねぇし学校側としては薦めたい。」 推薦の言葉に目の前に座る三条は目を大きくした。 「俺……が、ですか」 「三条が、ですよ。 他にこの部屋に誰がいるんだよ。」 2人の方が良いかと準備室から移動して進路相談室で汗をかきながら話をする。 窓を全開にしても気休め程度の風しか入ってこない。 これなら冷房の入ってる職員室の方が良かっただろうかとも思うが、でも、2人きりで話せて嬉しくもある。 「ほら、これこの間のテスト結果。 何位ですか?」  「あ、」 「大変よく頑張りました。」 1の数字がこれ程嬉しかった事はあっただろうか。 差し出した紙切れから顔を上げた三条は花を咲かせ、それを見ている長岡も満たされていく。 「ありがとうございます…っ!」 「なんのありがとうだよ。 三条が頑張った結果だろ。」 「先生の教え方が上手いからです。 沢山支えてもららってますし、その…」 「ん?」 「釣られ…ました。」 眉を八の字に下げバツが悪そうに笑う三条に、長岡もつい釣られてしまう。 何を言うのかと思えばなんとも可愛らしい告白だ。 「ははっ、それはそれは。」 例え釣られたとしても頑張ったのは事実だ。 その姿は知っている。 頑張ったって報われない事は沢山ある。 むしろ報われない方が多い。 努力が無駄になる事は五万とある。 だけど、三条はそれが実を結んだ。 ご褒美だと素直に受け取れば良い。

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