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第978話
「文化祭の出し物なんにしますか。」
教壇に上がるクラス委員長に任せ、長岡は窓辺近くにパイプ椅子を寄せて腰掛ける長岡は視線を窓の外へと向けた。
窓の外は薄暗く肌寒い。
広葉樹の葉がカサカサと音を立てながら地面に覆い隠しより薄暗さを強調する。
クラス委員長の声にあちらこちらから声が上がった。
「コスプレ喫茶」
「休憩所」
「喫茶…休憩所…、ちょっと書くからゆっくり言ってよ。」
「食い物の出店」
「例えば?」
「焼きそば?」
「去年なんか話に出たやつなんだっけ?」
誰に言うでもなく飛び交う言葉にクラスの誰かが反応をする。
「はしまき」
「それ!
コスパ良いよね?」
「文化祭にコスパ求めるなよ。」
「はぁ?
コスパ大切じゃん!」
黙って見守っていた長岡は教室内に視線を巡らせ、1人1人の顔を見た。
楽しそうな顔に、めんどくさそうな顔、手元のプリントに視線を落とす生徒もいる。
個性の激しい生徒が集まったが仲が良いのが救いだ。
そして、あの生徒もいる。
さらさらと髪を揺らしながら友人と話すあの生徒。
年相応の笑顔がキラキラと眩しい。
そして、愛おしい。
窓の外とはうって変わって明るい教室内で長岡はただ生徒の声を聞いている。
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