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第1114話

「三条、三条の筆記用具なんか貸して。 出来れば鉛筆か消ゴム。」 「え、良いけど鉛筆は持ってないよ。 …てか、なんで?」 「ご利益。」 清掃が終わると吉田が直ぐ様やってきた。 小さい子供みたいに両手を差し出し、なんか貸してときた。 吉田の発言に三条は口角を上げて頷く。 「あ、俺も!」 「良いよ。 今使ってる消ゴム使ったから半分に切る?」 「やった! 最後は藁にもすがるよな。」 「俺は藁か。」 拝み始めた友人に苦笑いを浮かべていると、知佳ちゃんが不思議そうな顔をして近付いてきた。 それはそうだ。 クラスメイトが同級生を拝んでいるんだから。 「なにしてるの? 写真撮って良い?」 「藁にもすがってんの。 ほら、三条合格してるから。」 「なるほど。 私もしとこう。 ご利益ください。」 「知佳ちゃんは流石に…。 あの…俺が変な目で見られる…知佳ちゃん拝まないで…、知佳ちゃん…」 そんな友達を、不思議そうな顔をした未知子ちゃんがこっそりと写真を撮りアプリを通して送ってきた。 どう見ても怪しい自分の姿に三条はタジタジだった。

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