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第1121話
二時間も勉強していると辺りは真っ暗になり、頼りない街灯がぼんやりと道路を照らしている。
そして、暗くなりぐっと気温が下がった。
手が悴んで痛い。
行儀悪いがポケットに両手を突っ込み、マフラーで顔の半分を覆い歩く。
地元の吉田とは駅でお別れ。
「吉田くん、お腹お大事にね。」
「うん。
ありがとう。」
先に知佳ちゃんが未知子ちゃんが利用する電車がやって来て、2人はあたたかそうな車内に乗り込むと三条達ににこやかに手を降った。
吉田はでれっとしながら手を振り返し見送る。
冷たい空気を巻き上げ去っていく電車を見送ると寒い構内より待合室で待ってようかと動く三条と田上。
吉田も付いて歩くが、待合室もそんなにあたたかい訳でもない。
腹痛を訴えていた友人の体調も気になるところ。
「良いよ。
寒いから帰れ。」
「俺が居たいんだって。」
「体調崩したら知佳ちゃんに会えねぇぞ。」
「帰るわ!
おっさきーっ。」
三条の一言に吉田はじゃあなと踵を返した。
「ははっ、げんきんなやつ。」
「吉田、じゃあな。」
「おう。
また明日。」
吉田は目の前の横断歩道を渡りきった所で振り向き見送る2人に手を降った。
誰も口にはしなかったが、この当たり前になった事が出来なくなる日が名残惜しかった。
だから、帰るのを渋り何時もの通りを守ろうとする。
「三条、なんかあったかい飲み物買おうぜ。」
「うん。」
三条が振り返ると吉田も振り返り、それを隣を歩く田上に教え、また手を降った。
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