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第1124話

雪が降り頻る中、段ボール箱を抱えながら何時ぶりかの実家に帰宅した。 駐車スペースから玄関までの短い距離を歩くだけで頭や肩を白く染められる。 玄関前で雪を払い、戸を開けると実家のにおいがした。 「ただいま。」 「やだ、正宗。 帰ってくるなら連絡してって言ったでしょ。」 「あー…、忘れてた。」 頭に雪をのせ本が詰まっていると簡単に想像出来る段ボールと愛猫のご飯を携え相変わらずの姿で現れた息子に母親は毎回同じ事を言う。 タオルを取りに奥に行く母親と入れ違いに、開けっぱなしの扉から愛猫がやって来て長岡の脚に頭を擦り付ける。 「蓬、ただいま。 カリカリ買ってきたから柏と食べろ。」 段ボールを置いて顎の下を撫でるとゆっくりと目を閉じた。 気持ち良さそうにする蓬を見ていると恋人がダブる。 自分の気持ちの良いところを撫でて貰おうと頭を動かし甘える蓬を甘やかしていると母親がタオルを手に戻ってきた。 手を止めると目を開け、可愛らしい目でもうやめるのかと見詰めてくる。 拾った時から変わらないその目には野良の鋭さは見受けられない。 「はい、タオル。 しっかり拭いてね。」 「はいはい。 ありがとうございます。」 「どういたしまして。」 タオルを首に引っ掛け乱暴に髪を拭い、やっと室内に入ると事を許された。 かかとを引っ掛け靴を脱ぐと歩く脚に纏わり付く蓬を踏まない様に部屋を目指した。

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