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第1134話
使い捨てスプーンで給食センターの弁当箱からカレーを掬って口へと運ぶ途中、脳裏にあの笑顔が浮かんだ。
「長岡先生は食べ方も綺麗ですね。」
「え…?」
「あ、すみません…観察してた訳では…っ」
相川は面白い人だ。
急に綺麗だと誉めたと思ったらすみませんと謝る。
そんなに気を使わなくても大丈夫だと口端を吊り上げた。
「ありがとうございます。
食べ方を誉められるとは思いませんでした。」
「とても、綺麗です。
綺麗な人は食べ方も綺麗なんですね。」
「いや、僕は綺麗では…。」
「あ、すみません…っ、また、僕は変な事を…。
違います、綺麗は本当で…あの、すみません、」
やっぱり面白い人だ。
素朴で飾らず、誰とでも対等に居てくれる。
それが相川の良いところだと思う。
「大丈夫です。
ありがとうございます。」
「…気分を悪くされたら、すみません。」
「褒められて嫌な気持ちになる人は少ないです。
それとも僕はそんな人間に見えますか?」
相川はふるふると首否した。
良かった。
歪んだ性根はバレてないらしい。
「冷めない内に食べませんか。」
「はい。」
「カレー、美味しいですね。」
「はい。
美味しいです。」
仲良くなれて良かったなと本当に思う。
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