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第1141話

解錠音に読んでいた本を閉じると廊下へと向かう。 靴下を履いていても冷たい空気が伝わってくるが、そんな事は小さな事だ。 カチャ… 「ただいま。」 「おかえりなさい。 正宗さん。」 休日出勤から帰ってきた長岡は靴を脱ぐなり三条を抱き寄せた。 きっちりとセットされた髪もスーツも長岡先生のものだが、優しく微笑むその顔は恋人のもの。 2週間ぶりの恋人。 長岡のコートから雪のにおいがする。 「遥登あったけぇ。 癒される。」 「忙しそうですね。 やっぱり俺が居たんじゃ休めないんじゃ…」 「遥登いない方が無理だろ。 待ってくれてる間つまんねぇだろうけど帰ってきて遥登いてくれると、それだけで頑張れる。」 ぎゅうぎゅうと抱き締めながら器用に廊下を進み部屋へと入ると、ちゅーと顔に吸い付いてきた。 恋人のぬくもりに心が満ちていく。 頬を挟む手は何時もより冷たいが、十分にあたたまった身体には気持ちが良い。 「でも、少しだけ仮眠させてくれ。 1時間…。」 進路だのテストだの忙しそうなのに時間を作ってくれている。 確かに、綺麗な顔は少し疲れていた。 コートをジャケットを脱ぐと三条を引き入れてベッドに倒れ込んだ。 「正宗さん、スラックス皺になりますよ。」 「アイロンかける。 遥登、抱き枕。」 すぐに聴こえてきた規則正しい寝息が三条をも眠りの縁に運ぶ。 綺麗な形の唇にそっと自分の唇をくっ付け、胸に顔を埋めた。 俺も、少しだけ…

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