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第1201話
ピピピ…
単調なアラーム音で目を覚ますと、カーテンの隙間から光が差し込んでいた。
窓の外は晴れているらしい。
三条は大きな口を開けて欠伸をしながら制服に着替える。
指定のYシャツにスラックス、それを押さえるベルト、ネクタイ、式典中は脱ぐように前日学年主任に言われたカーディガン。
腕時計を嵌めるとそっと縁を撫でた。
カチカチと小さな音と共に時を刻む時計が今は少し恨めしい。
ジャケットと鞄、それからスマホを手に部屋を出る。
「母さん、おはよう。」
「おはよう。
遥登。」
8ヶ月を過ぎ随分と腹の膨れた母親はにこやかにしているが、しんどそうにしている時が増えた。
あまり弱事を言わない母が時々腰や背中が痛いと言う。
弟の時は幼くて気付けなかったがこんな大変な思いをして腹の中で守ってくれていた事に改めて感謝する。
3学年は何時もより遅い時間の登校だが、何分電車の本数の少ない田舎だ。
1時間に1本、乗り換え駅で更に待つ事になるのでゆっくり出来るという事にはならない。
それでも、空いた時間の電車に乗れるのだから文句はなかった。
朝ご飯を食べながら、ニュース番組の隅に表示される時間を確認しジャケットを羽織る。
靴に足を突っ込むと踵を直し、リビングに向かって声をかけた。
「いってきます。」
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