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第61話 *

 しかし反対に目のまえの男は満足そうな顔になった。大きく頷くと、下着をぐいと押しさげる。涙腺と同じくゆるみ始めていたその場所は、透明な液体を滲ませていた。 「わかったよ」  顔をよせて囁きながら、親指で小さな孔を抉るように刺激し始める。そんなことをされたら、男だったら誰だってたまらなくなって、抵抗力も奪われなすがままになってしまう。 「……やあ、は、はぁ、ふっ」  知らず、甘い声がこぼれていた。すごく気持ちがいい。こんなこと、他人に施されたことがないから。  裏筋の浮きあがったところをやわやわと擦られて、すぎた刺激にあっという間に昇りつめてしまう。 「ああ……どうしよう、も、もう、ホント、俺、ダメ、ですから……」  切れ切れに喘ぎながら、頬を紅潮させる。視界もかすんできた。 「エロい」 「え、え」 「いつもはゆるキャラみたいなふにゃっとした顔してるくせに、なんだよ、くそっ。こんなときだけエロ可愛くなりやがって」 「そ、そんな、あ、あ、あ」 「まじムカつく」  と指先に力を込めてくる。そこ怒るところ? と、突っ込む言葉も出てこない。出てくるのは絶え間ない喘ぎだけだった。  下半身を触られるのは二度目である。このまえは怪我で、今回は劣情から。  上城の手が自分のものに絡みついている。あの、バーテンダー姿でグラスを握る手が。そう思うとぞくぞくきて、背骨に沿って電流が走った。  視界にスパークが舞い、神経が研ぎ澄まされていく。その中で全てが明らかになるように、上城のことが本当に好きで、この人だから欲情しているということが自覚された。  もうきっと、他の人には触られることはない気がする。というか、この人だけでいい。この人だけが、いい。 「ああ、ぃ、いい。――い、いく……も、もう……」  口をゆるくあけて、酸欠のように息を継いだ。上城が煽られたように、下唇に噛みついてくる。かるい痛みに震えが走った。  喰われてしまう。本当に、この身体を好きに喰われてしまう。  どうしよう。本気でおかしくなりそうだった。さっき飲んだ、たった一杯のアルコールが今頃効き始めている。顔が熱くなって、頭の中がぼうっとなって、意識がどこかに飛んでいきそうになった。  快楽が、下肢の嬲られているところからじんじんと響いてくる。上城の手の動きは滑らかで、優しくて、そうして容赦がなかった。

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