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第60話 *

「キスしてきたのは、そっちからだぞ」 「けど……けど……」  のせていた足をぐっと押しつけられる。 「……あっ」  硬くなったところが、びくびくと魚のように反応した。快感が脳髄を溶かしてくる。陽向は恐くなって、相手の腕を掴んだ。 「上城さん、お、俺、こんなこと、初めてだから……」 「初めて?」 「……は、はい。……だから……」 「だから?」  なんなんだよ、というように、もどかしそうな表情をされる。 「やめて欲しいのか?」  訊きながら、けれどゆったりと膝で擦ってきた。煽るような動きが憎らしいほど気持ちよかった。 「……ぁ、あ……う、うん、け、けど……」 「けど?」  陽向の言葉を引きだそうと、上城が一言ずつ後を追う。話しながら陽向は自分がどうして欲しいのか、どうしたいのか分からなくなってきた。嫌なのか、そうじゃないのか。 「けど、なんだよ」  触れられただけで、達きそうになってしまう。快感に戸惑う表情を見せてしまえば、上城の方も歯どめがきかないという雄の顔に変わった。 「……こんな、こと、されたら……も、もう、ダメ……だから……」  ここでやめてくださいと、言いたかったのに。 「そんな頼み方じゃ、俺の方もダメになるじゃねえか」  答えた相手は手をとめずに、陽向のコットンパンツのまえ立てをひらきにかかってきた。 「――え?」  困惑する唇に、キスが被せられる。相手も余裕をなくしているのが分かった。  なにをしているのかと問う暇もなく、下着の上に武骨な手が重ねられて、勃ちあがっていたものを握りしめられる。 「嫌なら嫌だって、早く言え。でないとやめられなくなる」 「ふぁ? え? ええっ」 「どっちなんだよ」  やわらかな動きで、陽向の分身の弱いところを責めてきた。その巧みな手に、混乱しながらも追いあげられてしまう。 「やめるのか、やめないのか」  尋ねながら、しかし全く手をとめる気配はなく、反対に段々と刺激を強くしてくる。未知の快楽に、ひ弱な身体はすぐに昂ってしまった。 「――ひあ、っ」  けれど、突然、上城は指先をとめた。  ぴたりと刺激を遮断して、陽向の昂奮をいきなり放りだしてしまう。ひとりだけ走らされていた陽向は、その意地悪な仕草に反射的に叫んでしまった。 「……ヤダっ……や、やめない……で……っ」  口走ってしまった言葉のか細さに、自分でも驚く。

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