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第59話 *
答えを求めて視線で縋る。上城はかるく目を瞠って、それから射とめられたのは自分の方だというように、不機嫌に眉根をよせた。
「そういう目が、応える目だって言うんだよ」
うなじを掴まれ、あ、と思ったときには、引きよせられていた。怒ったような顔が迫ってくる。けれど触れそうになる寸前で上城は動きをとめた。
瞬時ひたと見つめあう。
陽向は上城の瞳に吸いこまれるようにして、相手の唇に触れていた。
――なぜか、自分から。
「……」
お互い、視線は絡めあったままだった。陽向は自分のしたことが信じられず、石のように固まった。しかし心臓だけはバクバク暴走していた。
息をとめていたことに気がつかないで、途中で苦しくなって、ばっと顔を背けると肩を震わせ大きく喘ぐ。顔が茹ったように赤くなっている気がした。
いきなり腕を強く掴まれて、驚くと同時に床に押し倒される。
「……いっ」
背中がフローリングに敷かれたラグにぶつかった。今度は、噛みつくようなキスをされる。少しあいていた唇の隙間から、乱暴に舌が侵入してきた。こじあけるようにされて、全身が慄く。
「……ふぁ、……ちょっ」
事態の急変についていけない。なにがどうなっているのかわからないうちに、口内くまなく蹂躙される。上あごを舐られると、電撃のような怖気が背筋を駆け下りた。
「まっ……まっ、て、おねが……」
上城が服の上から身体を撫でまわしてくる。シャツの下から感じたことのない感覚が生まれてきた。
「そ、そん……、ぁっ」
頭はパニックになっているのに、身体はそうじゃなかった。気持ちよさに従順に反応している。それが余計に、混乱を引き起こした。
「ゃ……、ぅ、うそ……だ」
上城の膝が、陽向の股間にのりあげる。下肢にありえないやるせなさが襲いかかった。
「……ひっ」
引きつった声に、上城が唇を食みながら唸るように呟いてきた。
「硬え」
「ええっ」
ぐいっと圧迫されて、その存在の明確さに陽向は愕然とした。
「嘘……」
泣きそうな声が出る。自分で自分が信じられない。こんな、身体中に火がついたようになるなんて。初めての経験かもしれない。
「……待って。待ってくだ、さい。お願い、だから……」
涙目になって頼み込めば、上城は獣のように「むぅ」と喉奥で呻いた。
寸どめをくらったように、焦れた顔になる。
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