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第85話 危機
とあるバーのまえで、見覚えのある集団が立ち話をしていた。
そこにいたのは、この間、騒ぎを起こしたストリート系の男たちだった。道に広がって、なにやら内輪話で盛りあがっているようで煙草を吸いながら談笑している。
その数は三人。畠山はいないようだった。
いい気分がスッと抜けて、背筋に嫌な緊張が走リ抜ける。
陽向は気づかれないように、そうっと脇を通り抜けようとした。
そのとき、男らのひとりが陽向に気づいて隣の男に耳打ちした。言われた男がちらりと目をくれてくる。視界の隅に彼らの視線を感じながら、急ぎ足で通りすぎようとすると、後ろからいきなり肩を掴まれた。
「よお」
振り向けば、野球帽を後前に被り、耳にはピアスの男が陽向の顔をのぞき込むようにしていた。顔にはいいものをつかまえた、という底意地の悪い笑みが貼りついている。
「あんた、どっかで見た顔だな」
陽向の顔をじろじろと観察しながら、口元をあげた。
「ああ、見た顔だ。確か、畠山さんが見つけたらしらせろって言ってた奴だ」
「へええ。まじだ」
「おい、中にいる畠山さん呼んでこいよ」
男が顎をしゃくると、ひとりがバーの中に入っていく。すぐに畠山を連れて戻ってきた。
畠山は陽向を見ると、目を輝かせた。
「やあ、確かに昨日の奴だ」
「昨日もこいつに会ったんすか」
「上城と手ぇつないで歩いてやがった」
「へええ」
男たちが陽向を取り囲むようにしてくる。陽向はなるべく穏やかな口調で頼んでみた。
「……急いでるんで、道、あけてもらえませんか」
男らの肩越しに通りを歩く人が見える。けれど、影になっている陽向には誰も気づかぬようで素通りして行ってしまう。
「へえ。あんた、あいつのなんなの?」
ひとりが距離をつめながら訊いてきた。太目のその男は威圧感が半端なかった。
「……友人ですけど」
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