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第84話
昭和という言葉は、平成生まれの自分らは、ときに流行を外れた、時代遅れの象徴のように使ってしまうことがあるけれど、その時代をすごしてきたであろう人たちにとっては、なじみ深い古巣であるのかもしれない。
いつまであるかわからない場所だから、いつまでも守りたいと思う気持ちが湧くのかもしれなかった。
上城が、ここを大切にしようとする気持ちがわかる気がする。
陽向は通りを見渡しながら、自分が生まれるまえの空気を味わった。
彼に会いたい気持ちが、胸の奥からじんわりと湧いてくる。
会ってここのことや、それから彼のことを一杯話して、もっと色々と知りたい。昨夜のわだかまりをといて、好きだという気持ちを素直に伝えたい。
陽向は通りの店、一軒一軒を楽しむようにゆっくりと歩いた。
そうしてあと数軒で、通りも終わりというところで、ふと足をとめた。
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