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第6話
日本に帰る前に島岡さんからバイオリンのケースを預かった。
「これは、タクミさんしかケースを開けることはできません。
持っていては貰えませんか?」
「島岡さん・・・」
「ギイの心だけでもタクミさん・・・・・一緒に・・・・・・」
「ありがとう・・ございます・・・・島岡さん・・・」
本当はいけないことなのに、島岡さんはきっとリスクを背負ってまで、僕にsub Rosa 君を届けてくれた。
そして、僕はギイによって永久付与された君を胸に抱き日本に帰ってきた。
あれから10年・・・・・
君を片時も離すことなく弾き続けた。
今の僕ならば、君の隣に立てたかもしれないね。
ソリストとして、この数年は大きな舞台に立ち続けてきたのだから・・・
ヨーロッパ公演最後の日、僕に一輪の青いバラが届いた。
青いバラの花言葉は「夢叶う」
大きな舞台に立った今、誰の目にも僕は成功者に見えていたのだろう。
ただ、僕の夢は・・・叶ってはいない。
たぶん、永久に叶わないと思っていた。
一輪の青いバラ・・・・
ギイ・・・・
君の記憶は戻ったのだろうか?
それは、君を苦しめてはいないだろうか・・・
まだ、僕の夢は叶ってはいないんだよ・・・・ギイ・・・・・
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