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プロローグ
いかなる棘も、最初は鈍い丸みを帯びている。ごく普通の学生生活を送っていた俺に、突如降りかかった強い怒り。
その怒りは、周囲を傷つける棘となり、俺の生活を一変させることとなってしまった。
3ヶ月前。
父が胃がんで死んだ。胃の不調を隠しながら海外赴任を続けていた父。
帰国後は1年経たぬうちにあっという間にこの世を去った。
母はすでにこの世にいない。兄弟もいない俺は1人になった。遺されたものもごくわずかであるため、俺は実家を処分して、その金で都心へ引っ越すことに決めていた。
実家には20坪ほどの庭があり、雑草が生えぬよう、コンクリートで固められていた。そして、小さな蔵があった。子供のころ悪いことをすると「蔵に閉じ込めるぞ」と脅された。実際には閉じ込められることが無かったが、そのことが影響して、蔵には近づくことはしなかった。大人になった今も、一度もあけたことの無かった蔵を開けることについては抵抗があった。
父に以前から教わっていた場所に、きちんと蔵の鍵があった。
そして父のメモがあることに気がついた。メモには
「健太、蔵にある書物などは歴史的に価値のあるものばかりだ。これを開ける日がきたなら、蔵の物を売り、生活の足しにするように 父」
とあった。
早朝、意を決して蔵を開けた。
父が帰国後に病気の体で苦労しながら片づけを進めていたのが見て取れた。
畳3畳あるか無いかの蔵の中には桐の箱が並べられ、桐の箱には「浦島」と書かれている。
中でも大切そうに布で包まれた桐の箱には俺には解読不可能な古い字体で文字が書かれている。俺は、その箱から開けてみることにした。
ボロボロで褐色の汚らしい紙が入っており、解読できない文字が書かれている。箱の底のほうに、母の字のノートがも入っていた。
ノートには母の几帳面な文字が並んでいる。
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ノートを読み進めるうち、俺は震えが止まらなくなった。
作り話で無いのなら、どうすればよいのか・・・・・
俺はどうすればいいのか・・・・・
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