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第3話

「天国ってヒマだよなー」 ぼくは雲の上に寝そべった。 ここは自由だ。 だからというかなんというか、ヒマだ。 一部の超問題児だけ取り除かれた、平和すぎる世界。 若いころは問題起こしていても、天国に来るような歳になると、皆だいぶ落ち着いている。 つーか、老人ばっかだ。 少子高齢化というならば、ここほどそれに当てはまる場所はない。 もちろん、別の意味でだが。 でもこの前、このだだっ広い天国をお迂回していたら、自分と同い年の青年を見つけた。 「おっす」 「よーす」 互いに野球部ではなかったというのに、それっぽい挨拶を交わす。 彼の名前はケント。 死因は自殺だ。 「おれ、死んでよかったよ」 ケントはそう呟いた。 「なんで? 」 「うーん……苦しくないから」 「毎日、好きなだけ遊べるし? 」 「あと、何時間寝ててもいいし」 「ははは」 二人は笑った。 「ユウは? 」 ユウとは、ぼくのことだ。 「おれも来てよかったよ」 「ほんと? 」 ケントは嬉しそうな顔をした。 「うん。ただ、視界が老人ばっかりなのは、ちょっと鬱陶しいけどね」 ぼくは笑ってそう言った。 ここは老人ばかりだ。 人生を終えた老人たちが、ごろごろしたりぺちゃくちゃしている。 そうでない人でも、みんな、ナマケモノ状態。 なんせヒマだから。 ぼくはケントと別れて、家に帰った。 帰る途中に、男女で愛し合う恋人たちを見た。 彼は幸せそうに抱き締めあっていた。 そしてキスをする。 胸が締め付けられた。 恋人なんて、現世にはいなかったのに。

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