3 / 6
第3話
「天国ってヒマだよなー」
ぼくは雲の上に寝そべった。
ここは自由だ。
だからというかなんというか、ヒマだ。
一部の超問題児だけ取り除かれた、平和すぎる世界。
若いころは問題起こしていても、天国に来るような歳になると、皆だいぶ落ち着いている。
つーか、老人ばっかだ。
少子高齢化というならば、ここほどそれに当てはまる場所はない。
もちろん、別の意味でだが。
でもこの前、このだだっ広い天国をお迂回していたら、自分と同い年の青年を見つけた。
「おっす」
「よーす」
互いに野球部ではなかったというのに、それっぽい挨拶を交わす。
彼の名前はケント。
死因は自殺だ。
「おれ、死んでよかったよ」
ケントはそう呟いた。
「なんで? 」
「うーん……苦しくないから」
「毎日、好きなだけ遊べるし? 」
「あと、何時間寝ててもいいし」
「ははは」
二人は笑った。
「ユウは? 」
ユウとは、ぼくのことだ。
「おれも来てよかったよ」
「ほんと? 」
ケントは嬉しそうな顔をした。
「うん。ただ、視界が老人ばっかりなのは、ちょっと鬱陶しいけどね」
ぼくは笑ってそう言った。
ここは老人ばかりだ。
人生を終えた老人たちが、ごろごろしたりぺちゃくちゃしている。
そうでない人でも、みんな、ナマケモノ状態。
なんせヒマだから。
ぼくはケントと別れて、家に帰った。
帰る途中に、男女で愛し合う恋人たちを見た。
彼は幸せそうに抱き締めあっていた。
そしてキスをする。
胸が締め付けられた。
恋人なんて、現世にはいなかったのに。
ともだちにシェアしよう!