1 / 7

第1話

 スポットライトを全身に浴びて体があつい。じんわりと汗がにじむ。舞台の上で観客に見られて僕はいつも緊張していた。 『ルイくん、君ね。夫婦じゃないないんだから!』  低く透き通った声が会場に響きわたった。  これは相方のシンヤ。背が高く、スラッとしている。はっきりしたシャベリが得意なイケメン顔。女子生徒のファンも多い。漫才のツッコミ担当なんだ。 『もう実家に帰らせてもらいます!』 『だから、夫婦か!』  ワハハと笑ってくれる観客の声が心地いい。  さてさて、僕はというと名前はルイ。成長期は過ぎたというのに今でも列の先頭で、前に倣えで一度も倣ったことがないチビスケ。声が大きいことだけが自慢のボケ担当だ。 『お義母さんにいいつけてやりますから!』 『夫婦か! もう君とはやってられないよ!』 『どうもありがとうございましたー!』  パチパチパチ……。  そして、ここが最高に気持ちの良い瞬間。拍手を聞きながら舞台を後にするのが僕は一番好きなんだ。漫才は昔から好きだったけど、僕一人だけだときっとこの瞬間は体験できないかっただろうな。シンヤが僕を連れ出してくれたんだ。

ともだちにシェアしよう!