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第1話
スポットライトを全身に浴びて体があつい。じんわりと汗がにじむ。舞台の上で観客に見られて僕はいつも緊張していた。
『ルイくん、君ね。夫婦じゃないないんだから!』
低く透き通った声が会場に響きわたった。
これは相方のシンヤ。背が高く、スラッとしている。はっきりしたシャベリが得意なイケメン顔。女子生徒のファンも多い。漫才のツッコミ担当なんだ。
『もう実家に帰らせてもらいます!』
『だから、夫婦か!』
ワハハと笑ってくれる観客の声が心地いい。
さてさて、僕はというと名前はルイ。成長期は過ぎたというのに今でも列の先頭で、前に倣えで一度も倣ったことがないチビスケ。声が大きいことだけが自慢のボケ担当だ。
『お義母さんにいいつけてやりますから!』
『夫婦か! もう君とはやってられないよ!』
『どうもありがとうございましたー!』
パチパチパチ……。
そして、ここが最高に気持ちの良い瞬間。拍手を聞きながら舞台を後にするのが僕は一番好きなんだ。漫才は昔から好きだったけど、僕一人だけだときっとこの瞬間は体験できないかっただろうな。シンヤが僕を連れ出してくれたんだ。
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