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第6話

 これが終わりの合言葉。最後に一礼して終了するいつもの流れ。やっぱり悲しいなぁ。最後の最後までそんなことばかり考えて、僕は楽しめてたのかな。後悔しないかな。そんな矢先だった。 「ところでルイくん。進路のこと考えてる?」  不意にシンヤが言い出した。  えっ? 何それ、そんなセリフ、台本になかったよね。まだ舞台からはおりていない。急なフリに僕は焦っていた。 「えっ? 何それ?」  びっくりして、思ったことがそのまま出る。 「最近ずっと進路について悩んでだんた。だけど、俺、ちゃんと決めた。」  えっ? えっ? 舞台の上でその話するの? 嫌だよ。頭が混乱した。 「な、なんだよそれ、急に、やめてよ」 「いいから聞けって、今しか言わないんだから」  は? こいつは何を言い出すんだ? 頭に疑問符が浮かぶばかりだ。 「俺たち二人は、これからも漫才を続けてプロを目指します!」  やっぱり理解が追いつかない。でも頭ではわかってなくても心は敏感に感じているんだ。涙が一瞬で溢れてきた。さっきまでとは違う涙。 「俺たちは夫婦のようにはなれねぇと思ってる。でもコンビってそれ以上の、もっと大切なつながりなんだ。簡単にやめることもできないし、そんなこと一人で考えて決めることじゃなかった。なにより俺はルイくんとずっと一緒にいたいんだ!」  そういうとシンヤは僕のことをギュッと抱きしめた。  わー! なにそれ。どういうこと? まただ。また、突然で、勝手で、意味がわらかない。 でもシンヤの腕の中は暖かくて、嬉しい気持ちが込み上がってくるんだ。 「今日は俺たちの漫才をみてくれて、どうもありがとうございました!」  シンヤはそういうと舞台を後にした。 ちょ、ちょっと勝手に終わらせないでよ。僕は何も言えず、恥ずかしくなって、観客の視線から逃げるように舞台をおりた。

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