1 / 10
第1話
ずーっと見てた。
僕のかける言葉は君には届かない。
『大好きだよ』って、『いつもそばにいるよ』って伝えてるのに気付いて貰えない。
なぜ?
僕は君と同じじゃないから?
形が違う生き物だから?
頬を伝う涙を幾度となく拭ってあげた。
君は僕を優しく抱きしめてくれる。
とても・・とても・・・
優しく・・・優しく・・・
そして僕は気が付いた。
僕は人間じゃないって・・・
そう・・・君の飼い猫の「タクミ」
どんなに君を好きでも、抱きしめてあげることさえできない。
僕が恋したのは人間で
僕の飼い主の「ギイ」
もし、人間になれたのなら、僕は君の恋人になれるのだろうか?
ねぇ、ギイ。
同じサイズで君にギュッと抱きしめて欲しいよ。
それは、無謀な僕の願い・・・
叶うはずのない
儚い想い・・・
大好きな「ギイ」を独り占めしてみたかった。
もっと もっと 愛して欲しいと願うようになった。
ともだちにシェアしよう!