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第1話

ずーっと見てた。 僕のかける言葉は君には届かない。 『大好きだよ』って、『いつもそばにいるよ』って伝えてるのに気付いて貰えない。 なぜ? 僕は君と同じじゃないから? 形が違う生き物だから? 頬を伝う涙を幾度となく拭ってあげた。 君は僕を優しく抱きしめてくれる。 とても・・とても・・・ 優しく・・・優しく・・・ そして僕は気が付いた。 僕は人間じゃないって・・・ そう・・・君の飼い猫の「タクミ」 どんなに君を好きでも、抱きしめてあげることさえできない。 僕が恋したのは人間で 僕の飼い主の「ギイ」 もし、人間になれたのなら、僕は君の恋人になれるのだろうか? ねぇ、ギイ。 同じサイズで君にギュッと抱きしめて欲しいよ。 それは、無謀な僕の願い・・・ 叶うはずのない 儚い想い・・・ 大好きな「ギイ」を独り占めしてみたかった。 もっと もっと 愛して欲しいと願うようになった。

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