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第2話
「タクミ・・・どこだ・・・」
「ニャーン」
チリン チリンっと首についた鈴を鳴らして俺の足元にすり寄ってくる。
可愛らしいボディを見せつけながら、ゆっくりと擦り寄る様は、その辺の女性よりも優雅に見えた。
「いたか・・・」
つい綻ぶ頬の筋肉・・・
お前がいるだけで、ささくれだった心が嘘のように凪いでいくのが分かる。
「ニャーン〜」
グルグルと喉を鳴らし、すり付ける柔らかい頬・・・。
「ホント、可愛いヤツ・・・」
膝の上に抱き上げて、頭を優しく撫でる。
この小さな生き物が人になれば、自分は迷わずそばに置いて離さない。
「そんなことは夢だよな・・・」
ありえない話だ・・・
だけど、それ程までにこの綺麗な猫に惹かれている自分がいた。
変な気持ちにもなるよ・・・
「お前・・・なんで猫なんだろうな・・・」
漏れた言葉こそが、俺の本心だった。
『お前は俺を癒せる唯一の存在なんだよ。』と、タクミの頭を撫でながら、そんな事を思っていたんだ。
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