2 / 10

第2話

「タクミ・・・どこだ・・・」 「ニャーン」 チリン チリンっと首についた鈴を鳴らして俺の足元にすり寄ってくる。 可愛らしいボディを見せつけながら、ゆっくりと擦り寄る様は、その辺の女性よりも優雅に見えた。 「いたか・・・」 つい綻ぶ頬の筋肉・・・ お前がいるだけで、ささくれだった心が嘘のように凪いでいくのが分かる。 「ニャーン〜」 グルグルと喉を鳴らし、すり付ける柔らかい頬・・・。 「ホント、可愛いヤツ・・・」 膝の上に抱き上げて、頭を優しく撫でる。 この小さな生き物が人になれば、自分は迷わずそばに置いて離さない。 「そんなことは夢だよな・・・」 ありえない話だ・・・ だけど、それ程までにこの綺麗な猫に惹かれている自分がいた。 変な気持ちにもなるよ・・・ 「お前・・・なんで猫なんだろうな・・・」 漏れた言葉こそが、俺の本心だった。 『お前は俺を癒せる唯一の存在なんだよ。』と、タクミの頭を撫でながら、そんな事を思っていたんだ。

ともだちにシェアしよう!