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闇の魔物
ヨハン side
「…ただ食べたいだけ。それだけ」
「んっ」
お兄ちゃん、もとい怜央の唇をなぞる。柔らかくて熱を持ったそこをこじ開けて、月明かりで白く輝く歯を一本一本確かめる。
「キレイだ」
「ぐっ」
モノ言いたげな目で見られるのが楽しくなってくる。中指で上顎の際を撫で擦ると、体がビクンと跳ねた。ぎゅっと閉じられた目尻から涙が垂れているのが美味しそうで、なんの躊躇いもなく舐める。
「おいし…」
口の中はどうなんだろうね、と耳元で呟くと、今度は目を見開いて顔を横に振る。焔緋ってヤツに操立てかな?怜央をベッドに横たわらせて、震える唇を舌で撫でる。
「やだ、ちょっ、!んぁっ!」
舌で固く閉じられた歯をこじあけて、怜央の震える舌へちゅくちゅくと自分の唾液を注ぐ。飲んで、と囁くとンン、と目を潤ませながら喉を鳴らした。どうしてこんなに可愛いんだろう。
あの焔緋って男にも見せたのかな。
「美味しい?」
「ぜんぜんッ、んッ!?な、にコレぇ…ッ」
俺の体液は催淫効果と対象を従わせるフェロモンの成分が詰まってるんだよ、とは言わずに、まずは柔らかくてしっとりした上唇を舌でなぞる。ピクピクと反応し、ふ、ふ、と浅く呼吸をする怜央にゾクリと背中が震えた。
勿体つけるようにそーっと舌を忍ばせて、ちろちろと歯列を舐めてから、またむりやりこじ開けて侵入する。怯えたように奥へと引っ込んだ舌を誘うようにつんつんする。
「ふふ、食べないからべーってして?」
俺のフェロモンで抗えないようになった怜央は控えめに唇から舌を覗かせる。淫靡なピンク色をしたそれを自分の舌で迎えると、気持ち良さそうに目を閉じて頭に腕を絡めてくる。
「ん、ぷ、ァッ、っ」
「きもちぃね。もっとしてほしい?」
「…ゃアっ」
「もう。」
クチュクチュと耳をくすぐる音をさせながら、口の中を蹂躙する。もうどちらのとも分からなくなった唾液を飲ませて、これ以上にないくらいとろとろになっている頬を撫でる。汗ばんできて火照る身体に困惑しながら、両手で俺の肩を掴みながら必死に舌を出している姿に今までにないくらいに煽られる。股間が痛い。最後にじゅっと口に溜まっていた二人の唾液を吸ってから、ゆっくり顔を離した。
あのいつものお兄ちゃん面はどこへやら、テラテラ光る口を半開きにさせて、下半身をもじもじさせながら荒い呼吸を繰り返す。目だけは律儀に俺を見つめている。誘ってるのカナァ?
耳たぶをいじるとさらにビクッと身体をはねた。与えられる刺激に恍惚とした顔になる。口が寂しいのか、自分の人差し指を舐め始めた。
「はは、口はまたあとでね」
もうこの状態になったら理性的な言葉はほとんど通じない。分かるのは快か不快かのみ。赤ちゃんレベルまで落ちる。ただし性欲はあるんだけど。汗ばんで濡れてきた服をめくりあげて、胸の方へ弄 ろうとして、カツ、と爪に何かが当たった。
「…何、これ?」
程良く筋肉の付いた、白い腹の真ん中に付けられたソレ。耳にピアスが開いているのはいいけどまさか臍にまで開けてるとはね。十字架を模した黒石のピアス…。指でなぞるとピリピリと静電気が流れた。魔力が込められている。誰がつけたんだろうね…?こんなのを着けているなんて悪趣味すぎる。取ってあげないと。
「だ、だめ、外さないで…」
小さく反抗する怜央の、刺激で尖った薄桃色を嬲る。
「あっゃんっあぁっひんッ」
「どうかな、気持ちいい?」
「や、め!く、すぐッたいッ!ぁ…あっ…」
「どうして外したくないの?」
「の、のあさんにっもらったからッ…だめっ」
「ノアサン、ね。でも知らないよ、外す」
「あッ!」
乱暴に、かつ怜央を傷つけないようにピアスを外し、床に放った。キン、とぶつかる音がするとブワッと寒気が襲う。
「な…!?」
この尋常じゃない魔力の持ち主はどこからともなく現れた。黒いシルエットに輝く赤い瞳。同類であることに違いはなかった。
怜央はそちらを向いて何言か呟くと、意識を失ってしまった。
「お前がノアサンか?」
「ごもっともだ」
フ、と笑う声がしたと思ったら、
「全く…お前は昔からイヤなものに纏わりつかれるな…」
怜央はノアとやらの腕の中にいた。
悪魔と吸血鬼のフェロモンにあてられて気を失った怜央の頬をくすぐるように撫で、乱れた服装を整える。
返せ、と口を開けたがそれは声にならず、同時に体が動かないことを知る。
「お前に用はない。消えてもらおうか」
こちらへ歩くと月明かりで青白い顔が顕になった。
お前はまさかーーー、
次の瞬間、ヨハンの体は吹き飛び、壁に打ち付けられた。至るところから血が吹き出してそのまま意識を手放した。
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