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いつまでも一緒に
「かぃ...ぉ...」
倒れてどのくらい時間が経ったのだろうか。
全く検討もつかないが、僕はベッドの上に寝ていて、そのベッドに腰かけるようにして海王がいる。
未だ嘗てないほどの、その近い距離感に、こんな時だというのに...いや、こんな時だからこそとても嬉しく、笑みが溢れる。
海王の名前を呼ぶと、上手く声が出なかったにも関わらず「...なんだ?」と聞き返してくれた。
返答に少し間があったので、その理由に思いを巡らせてみる。
あ、そう言えば海王の名前を呼んだのは初めてだったかも知れない。
そう、思い至った。
海王の名前を呼んだのは返答が欲しかった訳ではなく、ただ何となく呼びたかったからなのだが、最後に自分の名前も呼んで欲しくなってきたので頼んでみることにした。
「ぼく...な、...ぇ...よ...で?」
ああ、ダメだ。
もうほとんど声が出ない。
海王にちゃんと伝わっただろうか?
出来れば早く呼んで欲しい。
僕には多分もう、ほんの少ししか時間が残されていない。
「お前の名前...」
ああそうか、俺には名前などなかったではないか。
なのに名前を呼んで欲しいなどと言うお願いをしてしまった。
やはり僕は海王の言う通り馬鹿な人間なのだろう。
「お前の名前は...トリトンだ。...トリトン、安心しろ。お前は生を終える訳ではない。これからは俺の一部となって共に生きていくのだ。だから何も心配することはない。迷わず俺の胸に飛び込んでこい。...出会った時と同じように」
--海王...ありがとうございます。名前、ありがとうございます...っ!これからは海王と一緒に生きていけるんですよね?...なのに何故泣いているのですか?今僕がそちらへ行きますから泣かないで下さい。
海王の胸に飛び込んで行きたくて、手を広げたつもりだったけど、実際には指が数センチ、シーツの上で動いただけだった。
しかし、その直後に大きな、暖かい存在に全身を包み込まれる感触がした。
初めて感じる心の充足感に全身が溶けていくようだ。
--海王!海王っ!これからはずっと一緒に...
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