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限界

毒を流し込まれるようになってから早一週間。 チップの大きさからしてそれ程多量の毒を流されている訳ではないはずだが、もう海王に不調を隠すことすら出来ないくらいまで体調は悪化していた。 きっと、少量で強い効果を示す毒を毎日少しずつ打たれているのだろう。 「はぁ...はぁ...」 今日は朝から呼吸もし辛く、どうしても呼気が荒くなってしまっていた。 「...お前、俺に何を隠している?一週間でこんなにも痩せ衰える筈がない。それに今日は呼吸も...」 海王に理由を話したって解決するわけではないので、何も話すつもりはなかった。 それに、チップは頑張れば肉体を抉って取れないことはないだろう。 弱った僕では抵抗など出来ないだろうから、どうせいまたチップを埋められるか、直接毒を打たれるかもしれないけれど。 でも、僕はチップを抉り出すつもりはない。 ...何故ならここ数日で知ってしまったから。 海王の視線を一心に受けられる幸せを。 僕はきっと始めから身も心も海王に捕らわれていたのだ--始めから完全なる「親衛隊」の一人だったのだ。 今なら「親衛隊」の気持ちが分かる。 一度惹かれてしまったら、何があっても「想い人」から離れることなど出来ない。 そして僕は思うようになった。 僕は「親衛隊」の中でもとても幸運に恵まれているのではないかと。 何時終わる生だったかは分からないが、普通ならその生を終わらせる時ですら「想い人」の愛情を一心に受けることは出来ない。 なら、今海王の愛情に埋もれて生を閉じれることはこの上無く素敵なことなのではないかと。 こんな幸運を自分からみすみす逃す手はないだろうと。 今の僕はそう考えているのだ。 「呼、吸...?...はぁ、...はぁ、べ、つに...はぁ、大、じょ...っ...」 ...バタン 「おいっ!しっかりしろ!...ぉぃ...」 海王の耳障りの良い低音を何処か遠くに聞きながら、僕は遂に倒れてしまったのだった。

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