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第160話 エピローグ(3)

「んー?あ、そうだ。俺の従兄弟たちも、お前に花束を渡したいと待ってるんだがな」 「え?あ、ディーノとアーロン?」  二人はエミールの年の離れた双子の弟たちだ。レヴィたちが卒業と同時に入れ替わるように入ってきた。二人とも、エミールに似て、イケメンで頭も良くて、レヴィたちがいなくなった代わり、とでもいうように、あっという間に学校ではすごい人気者になった。  そして、そのレヴィたちの代わり、という言葉通り、僕にずっとへばりついていて、まるで警護でもされてるみたいだった。その彼らとも、今日でお別れ。 「ノア!」  校門のところに、おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に、双子も花束を抱えながら立っていた。 「卒業、おめでとう!」 「ありがとう」 「これで、僕らのお役目も終わりだね」 「ちょっと、寂しいけど」  そう言いながら、僕の両頬に軽いキスをした。 「こらっ!誰がキスしていいなんて言った!」 「いいじゃん!それぐらい!四年間、ノアを守ってきたんだからさっ!」 「……え?どういうこと?」  僕はレヴィの顔を見上げると、顔を真っ赤にしながら困ったような顔で、僕からの視線をはずしてる。 「まぁ、察しのいいノアなら、わかるでしょ?」 「そうそう、この我儘王子に、僕たち、ここに入ることが決まった時から、言われてたのさ」 「ノアの身辺警護をしろってね」 「レヴィ……」  僕は呆れながらも、僕のことを心配してくれていたレヴィに感謝の気持ちのほうが勝ってしまった。僕は、レヴィの腰に抱き着きながら、小さく「ありがとう」と呟いた。その声は、彼には届いたのだろう。大きな手が、僕の白金の髪を優しく撫でた。 「あー、あー、あー、そういうのは王宮に帰ってからにしてくださーい」 「そうですー。ナレザール様たちも、呆れてますよー」  そう言われて、慌てて身体を離す僕たち。それを見て、みんながクスクス笑ってる。その幸せな空間が何よりも嬉しくて、僕は早く、王宮へ帰りたい、と思ってしまった。 「さぁ、帰ろうか。ノア」  校門の前にある白塗りの大きな車のドアが開く。優しい眼差しのレヴィが差し出した手に、僕は微笑みながら手を伸ばした。 <終> 

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