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第2話

「ったーい。マトったらそんなに怒んなくてもいいのに。」 部活帰り。俺と結衣が並んで学校の坂を下りながら歩く。 結衣が抱きついたあと俺は気が動転して、結衣にげんこつを食らわしたのだ。 「あのねぇ、あそこで冷房がなくてただでさえ暑いのにいきなり抱きつかれたら、熱くて死ぬでしょ?」 「そんなことないよ〜。まぁマトが倒れたら俺がお姫様抱っこで病院連れて行ってあげるけど。」 隣を歩く結衣が俺を覗き込んで笑う。少し長い髪の毛は弓を持つ時は払わないようにピンとゴムで縛っていたのが今は下ろされていた。 「バーカ。あんたには俺は運べないよ。だって俺の方が身長高いからね。」 「そんなことないよ〜。だって俺の方が筋力はあるもんね!マトなんてちょちょいのちょいだ!」 そう言って結衣がこぶしを作って俺に見せた。細くて白い結衣の腕にはこぶしを作ると思ったよりも筋肉があることが分かったが俺の方が結衣よりもあるように見える。この小さくて細い体にどんだけの力があるんだよ、と突っ込みたくなってしまう。 まだ夏だからかあたりは明るいが太陽が山に沈んでいた。 「はいはい。さっさと帰らないと門限過ぎない?」 「んー?そうかな。まぁ俺は今日は夕食摂らないって寮母さんに言ったから大丈夫なんだけど。」 「あ、そうか。今日はお祭りがあるんだっけ?」 「うん。誘われちゃってさー。まぁ面倒臭いから、こっそり帰ってくるけどな。」 「また女子か。」 「うん。マトは行かないの?女子と行くよりは俺マトと一緒の方が好きなんだけどなぁ。」 「ん、ごめんな。俺課題終わってないから。」 この辺りで行われる地域最大の祭り。 ここら辺の人ならみんな集まる。もちろん俺たちがいる寮の生徒もほとんどがお祭りに行くために寮の夕食を摂らない人が多い。 俺に終わってない課題はないがこの祭りだけは俺はどうしても行きたくなかった。 「でもさ、去年もマト同じこと言ってなかった?俺の方が終わってない課題がたくさんあるんだけどな?」 「あんたより俺は優秀なんだよ。」 「んー、じゃあなんか買ってきてあげる!」 「ありがと〜。」 ー結衣は覚えていない。俺たちのあの一年間を。 俺たちがもうすでに6年前に親友であったこと。俺がその夏祭りにいけない理由。 結衣、俺たちずっと前から親友だったこと、覚えてないの?

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