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第11話

深い闇の真ん中に白く光る(しとね)がある。 その上に四肢をしなやかに伸ばした裸身の虎彦が、仰臥する早矢兎に覆いかぶさって微笑んでいる。 早矢兎は身体が動かない訳ではないが手脚がやけに重く動かすのが億劫に感じていた。 見上げるすぐ目の前でくっきりとまつ毛に縁どられた薄茶色の瞳が嬉しそうに揺れている。 「これは夢でしょう?虎彦さんは(バク)か何かで私の夢を食べに来ている」 「夢ではないですよ。夢なんて獏の食べ物です、私が食べたいのは…」 虎彦はそこで言葉を切って続きを言う代わりに早矢兎の唇を吸い始めた。下唇を緩く噛み上唇を舐めその柔らかさを確認してゆく。暖かい掌が首筋をそろそろと這い上って耳の形を確認する様に周りを探ると早矢兎は思わず息を漏らした。開かれた唇に薄く力強い舌が入り込み、ザラリとした感触が早矢兎の欲望を開いた。 目を閉じて上気した顔を上に向けて吐息を漏らしながら虎彦が腰を動かしている。 手で扱かれて硬く屹立した早矢兎のそれを自分の孔に擦りつけて、先に滴っていた粘液で濡らしながら少しずつその中心に沈め始めた。 入っている部分が熱い、明らかに人とは違う体温に早矢兎が驚くと、低く唸る様な声で「熱いでしょう」と上にいる虎彦が笑った。 入れては腰を浮かして出し、また入れては腰を上下させながら進め、最後は大きく勢いをつけて身体を落として全てを包み込んだ。のまれた早矢兎の方が反射的に声を漏らす。 滑らかな粘膜で締め付けながら扱かれる感触に早矢兎は思わず声を出しながら腰を浮かせた。形容し難い快感の塊が体内に生まれては自分を支配してゆく中で微かに残っていた理性が薄らいでゆく。 自分を見下ろす青年の肌は内側から光っているかの様に美しい。彼の自信に満ちた視線に捕えられると心臓に打ち込まれた微細な痺れが甘く体を駆け巡る。 いくつもの季節を生き抜いてきた獣が突然死ぬ様に虎彦が消えてしまうのではないかと早矢兎は脈絡のない恐怖を感じた。彼を逃すまいと腕を伸ばして抱き寄せ様としたが胸の上に突かれた虎彦の手がそれを押しとどめる。 規則的な腰の動きはやがて速まって早矢兎を絶頂へと導いた。虎彦は自分の中に放たれた早矢兎の全てを受け止めた。満足した獣は恍惚の表情で虚空を見つめて自分の身体の中の様子に耳を澄ませている。 孔の奥に広がる精が取り込まれるのを待ってゆっくりと腰を浮かせると既に再び硬さを取り戻し始めていた早矢兎の陰茎が跳ねた。

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