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第9話
ダルク自らに堕ちて来て欲しかったが、それは望めそうにない。
贖罪なら、贖罪らしく無理にでも堕としてしまおうと――。
何時もより丹念に身を清め、香油を塗りたくり、何時もは纏め上げている腰まである髪をそのままにダルクの到着を待った。
王都から馬でやって来たダルクは部屋に入るなり顔を顰めた。
「来客でもあったのか?」
「いいえ。貴方以外誰も来ていませんよ」
「ならこの匂いは?」
「これは私が付けた香油の匂いです」
「香油?」
「ええ。こういった匂いはお嫌いですか?」
「いや、嫌いじゃないが……」
「そうですか。それはよかった」
ほっと息を吐く。
「お茶の用意はできています。さあ、どうぞ」
着席を促すと、ダルクは何時もの席に座った。
温めておいたカップに茶を注ぎ差し出すと、ダルクは無言でそれを受け取った。
茶を啜り、暫し沈黙が続き……。
「ダルク殿。折り入ってお願いしたい事があります」
「何だ。改まって」
「その……、何時もより深いところを刺激して欲しいのです」
遠回しな言い方に何を言わんとしているか察する事ができないのだろう。ダルクは困惑顔で固まった。
「ダルク殿が私相手に興奮しない事は分かっていますが、こんな事頼める相手、他にいないのです」
「カヤークシナ殿。俺は……」
「貴方のお茶に精力剤を仕込みました」
「何…だと?」
「最後まで付き合って下さるのでしょ?」
言質を突きつけるとダルクは顔を顰めたまま頷いた。
せめて汗を流させて欲しいと言われ、メイドに浴場へ案内させ、一人部屋に残った私はベッドに腰をかけ、ダルクを待った。
もしかしたら浴場の窓から逃げ出していたらどうしようかと心配し、立ち上がる。
ベッドルームを飛び出し、私室のドアを開けようとドアノブに手を掛けるが、力を込める前にドアは開いた。
「怖気づいたのか?」
それは私が言うべきセリフだと目の前の長身の男を見上げていると、ダルクは逞しい腕で私の腰を抱き寄せた。
「今更止めるなどと言ってくれるなよ」
「言う訳ありません」
ダルクは私を横抱きにしベッドルームへと運びこんだ。
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