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第13話
歪な関係を終わらせる為、就業時間を過ぎて直ぐに身体にかけていた勃起抑制の術を解くと、ダルクへ向け伝書の術式で『話がある』とメッセージを送った。
何時ものように茶の用意をし、待つ事十五分。執務室の扉は叩かれた。
剣術の訓練を抜け出してきたのか、練習着のまま滝のような汗を流している。
「お呼びだてしてすみません。直ぐに済むので座ってもらえますか?」
席に着いたダルクへ茶を出そうとするが。
「茶は結構だ。用件はなんだ?」
先を急かされ、取り出したカップを元に戻した。
「お急ぎのようですから単刀直入に言います。どうも治ったようです」
「…何の話だ?」
「何って、勿論、勃起不全の事です」
「治った…だと?」
「はい。今朝起きた時に自然と屹立してて、先程も少し弄ってみましたらちゃんと勃ちました……って職場でする事じゃないですね」
悪戯ぽく笑って見せるが、ダルクは眉間の皺を緩めなかった。
「昨日まで無反応だったのが、急によくなったと言うのか?」
「ええ。理由は分かりませんが、すっかりよくなりましたので、今後はダルク殿の手を煩わせる事もない……」
「本当に治ったのか、証拠が見たい」
「えっ……」
責任感の強い人だ。自分の目で確かめないと信じられないのだろう。
人前で自慰するのは恥ずかしいが、ダルクには散々痴態を晒しているのだ。今更だろうとズボンの前を肌蹴させていると、不意に影が落ちてきた。
顔を上げると、テーブルを挟んで向こう側に居た巨体がそこにあった。
「ダル……」
噛み付くような口付けに反射的に顔を背けようとするが、顎を掴まれ、阻まれた。
歯列をなぞり舌を絡ませ、口内の余す所なく蹂躙する口付けにぷっくりと立ち上がった乳首を摘まれ、身体が跳ね上がる。
「ふぅ、…ん!」
服の上から親指で押され、摘まれ、引っ張られるを繰り返され、堪らずに腰を揺らしていると唇が解放された。
「本当に治ったんだな」
欲望を主張しているモノから蜜を掬い取りながらソコを見下ろすダルクに、甘い余韻を振り払い必死に答える。
「ええ。ですからこういった行為はして頂かなくて結構ですので……」
「治ったから、女を抱きに行くのか?」
何を問われているのか分からずに押し黙っていると、乱暴にズボンを剥ぎ取られ、片足を肩に担がれた。
大きく開いた脚の奥へ指が忍び込む。
「男を受け入れる事を知っている身体だ」
いやらしい身体だと責められているようで、羞恥から下唇を噛んでいると、二本の指は硬く窄まった秘部を綻ばせるようにゆっくりと抽挿を繰り返す。
「俺の指を離すまいと、吸い付いて離れない。こんな身体で女が抱けるのか?」
「別に女性を抱きに行ったりは……」
「なら、他の男に抱かれに行くのか?」
ずるりと引き抜かれた指の換わりに熱く滾った肉塊が押し当てられる。
「ダルク殿、待って…もう少し慣らして……」
まだ十分に蕩けていないソコを無理矢理抉じ開けるようにして楔が沈み込まれる。
「あっ、あぁぁっ…あん」
みちみちと一杯一杯に押し広げられた粘膜がダルクの形に添い、蠕動する。
「すっかり俺の形になっている。こんな身体で他の男に抱かれるのか?」
「何言って……」
内壁を突き崩すように突き上げられて、その後は言葉にならなかった。
「やっ…ああっ!」
片脚を抱えられているせいで奥の更に奥まで暴かれ、身体を仰け反らせる。
「カヤークシナ殿は奥を責められるのが好きだな」
「ダ…ダメ……あっ…」
「ここに出されるのが好きだろ?」
「ちっ、ちが……ふ、ぅんっ……」
「違う? なら何故昨日のをまだここに残しているんだ?」
「そ…んなの…残って……ま、せんっ…」
「残っていないなら、また出してやろう」
淫靡な水音を響かせながら激しく腰を打ち付けられ、背筋から這い上がる妖しい痺れに耐えていると、より激しく突き上げられ、後ろだけで達した。
痛いくらいの快楽に身を震わせていると、一拍遅れでダルクのモノも弾け、最後の一滴まで最奥に残そうと続ける抽挿を震える身体で受け止めた。
暫くして息を吐くと、体内からダルクのモノが引き抜かれ、担ぎ上げられていた脚が下ろされた。
「掻き出しても、また出してやる。毎日な。俺のモノを腹に残したまま他の男に抱かれる事はできんだろう?」
マーキングしたから自分のものだといいたいのだろうか?
所有欲?
この身体に溺れてくれれば、少しは情も湧くかと期待していたが、宰相の娘との縁談という出世の道が現れた今は湧いた情など邪魔でしかない。
いっそ不特定多数の男と関係を持ってみせれば、呆れて手放すだろうかと考えてみたが、そんな事しようものならより一層独占欲が増し、酷い事になりかねない。
何よりダルク以外に身を任せるなど想像するだけで吐き気がした。
「この身体に執着があるのなら、結婚まではこの関係を続けても構いませんが……」
「結婚?」
「流石に結婚後まで続けるのは奥様に申し訳ありませんから……」
「待て、何の話だ?」
「結婚するのでしょう?」
「誰が?」
「貴方が、宰相の娘とです」
ダルクは困惑に顔を歪め自身の顎を摩る。
「それで止めると言い出したのか?」
「い、いえ。元々この関係は勃起不全の治療の為のものですから、それが改善された今は必要がなくなったと言うだけです」
ダルクは常にへの字に曲げている口角を上げ、頬を緩ませた。
「見合いの話なら、随分前に断った」
「断った……」
「お嬢さんに好きな人間が居るからと説明して、向こうから断るように頼んだ」
好きな人間――。その言葉に落胆し俯くと、顎を取られ、上を向かされた。
「そなたの事だ」
私……?
「嘘を言わないで下さい。だって私に触れても一度も興奮していなかったじゃないですか!?」
「治療目的での行為に興奮する訳にいかないからな。術具を使って欲情しないようにしていただけだ」
私と同じように?
「知っての通り単細胞だからな。初めは、カヤークシナ殿の話を信じた」
何を……。
「男としての誇りを取り戻せればと手を貸したが、後ろを弄って欲しいと頼まれた時に違和感を覚えてな。調べてみた。欲情を抑える術式があるのだからその逆の術式もあるだろうと」
バレていた……。
「入隊からこれまでずっと避けられていたからな、好かれているとは思えなかった。醜い痕を付けた俺をからかっているのだろうと思ったが、大胆に誘う割には何もかも不慣れで正直訳が分からなかったが……」
上手く騙せていると思い上がっていた自分が恥ずかしい……。
「抱いてくれと頼まれた時、好かれているんだと確信し気を良くしていたのに、登城したした途端止めると言われ、暴走してしまった。すまん」
「いえ、こちらこそ…その……」
すみません――。消え入りそうな声で謝ると肩を抱き寄せられた。
「謝る事はない。俺もそなたも不器用だっただけの話だ」
常に不機嫌顔の男の笑顔に驚いていると唇を奪われた。
情熱的な口付けに応えていると優しく抱きしめられ、贖罪ではない鎖を手に入れられたのだと、胸が熱くなった。
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