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【儚い雪の結晶5】

「アキラは消えたりしない…」 そっと優しく抱き寄せながら、願うように囁く… 「……」 「大丈夫、俺がついているから…そんなことは言わないでくれ」 「…アリガト」 アキラはまたクスっと笑って短くお礼を言う。 不治の…進行性の病を抱えている彼に… どんな言葉を伝えて、安心させたらいいのか… 最善の言葉はみつからない… けれど…アキラを失うことなんか考えられない… 再び瞳を重ね… そっと、頬に触れ…その彼の可愛い唇を親指でなぞる… キスを求めるときの癖… 彼はもう良くわかっていて… 自然な流れで身体を寄せてくる… 「好きだよ…」 大切な想いを囁いて… 彼が安心してそばに居られるように… 優しい心で包み込み… その唇へ… 優しくキスを落とす… そして、再びその身体をぎゅっと抱きしめる。 失いたくない… 愛するその人を… 自分が守っていく… 大切なその人と…その時間がこれからも続いていくと願って… 雪の舞い降りるクリスマスの夜に… 密かに願い…心に誓う。 「帰ろ…?」 そっと身体を離し… アキラは首をかしげるように促す。 「あぁ…」 その姿を愛しく見つめ… そっとアキラの片手を優しく握って… 2人の大切な時が流れる我が家へと、歩き出すのだった。 【終】

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