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第29話《瞬きの中で》

八月も終わりの土曜日。 綺麗に晴れた青空の日。 みずきは悲しくもコンビニ店員に勤しんでいる。 今日の仕事は16時まで、後30分で終わりだ。 レジはバイトに任せ、みずきは商品棚の整頓をしている。 (今日、アキラは学校休みだったな…帰りに寄ろうか…) などと頭の中は、もう仕事とは関係ないコトを思ってしまう。 アキラと恋人同士のような付き合いをしはじめて、もうすぐ2ヵ月…… だいぶ慣れてきた。 『いらっしゃいませ』 自動音声機の声で客が来た事を知らせるが、振り向くこともなく棚を片付けていたみずき。 「よ!みずきっ、がんばってるか?」 急に声をかけられ驚く。 しかも、よく知っていて…聞きたいと思っていた声。 「ア、アキラ…?なんで!?」 かなりびっくりしているのを見てアキラは… 「そんなに驚いた?」 「あ、あぁ、今日仕事だと教えていないのに…」 「知らなかったんだけどな、ちょっと用があってこの辺きたらみずき見つけて…様子観察しにきたんだよ」 「様子観察…」 おもしろい言いまわしだったので笑ってしまう。 今日のアキラの服はメーカーものらしい白いカッターにジーンズ。 黒のスニーカーを履いて、頭には薄手のぼうしを髪をおろしたまま深くかぶっている。 普通の男がこの服装をしてもおかしくはないが、アキラがすると女に間違われても文句は言えない。 みずきはコンビニのエプロン姿。 無愛想な面がまえだけれど、どことなく似合っているのが不思議だ。 「マジメだなぁ、みずきはー、そんな細かいコトしたふりしとけばイイのによ」 「まぁ客がいないから、暇つぶしにな…」 「ふーん、でも、レジは?…あ、店員二人なんだ」 ふと、レジの方を見ると… じっとバイトの女の子がこちらを見ているのに気付く。 あまり好意的ではないようだ… 気付いていないのかみずきは棚を片付けつつ言う。 「そう、店長もたまにしか来ないから楽なんだ」 「へー、でも立ちっぱなしなんだろ…大変だよな」 「まぁな、しかし…その格好は…」 「ん?似合うだろ、今日天気良かったから帽子かぶってきた」 軽く片手で帽子を抑えながら答えるアキラ。 その姿もかわいい。 「似合うけど…その、女みたいだぞ…」 そんな姿で街を歩かれては、みずきは心配で仕方ない。 言いにくそうに伝える。 「まーね、今さらじゃん。来がけにナンパにもあうし、髪おろしてるからかもしれねーケド。少しの用だったからめんどくさくてな」 「な、ナンパ?」 「すげーだろ、普通の女でもなかなかないぜ、きっと。オトコだって言ったら反応がおもしろいんだ」 少し笑ってそんな事を言う。 みずきは心配して言葉を出そうとするが、アキラが先に何かを見つけて声を出す。 「あ!あれ見ろよっ」 「え?」 「向こうから来るのヨシじゃねぇ?」 視線を外に向けると確かにヨシだ。 長身で黒Tシャツを着ている美形な奴、かなり目立つ。 「そうだな…」 ヨシがコンビニにやって来るのは牧歌的な出来事なので、驚かず普通に答えるみずき。 「うーん、最近会ってねぇケド、全然変わんねーなヤツ」 少し嫌そうな顔をして、そう呟く…。 「まぁな、ヨシは家がこの近くだから時々やってくるんだ…」 みずきが説明している間に自転車を置き、走ってくるヨシ。 「おーい!みずきっ聞けよ、俺さぁ!」 バタバタ走ってきて、アキラの後ろ姿を見て、ピタっと止まる。 「って、誰そいつ!えっ?みずき彼女いたっけ!?」 かなり驚いているヨシ。 「クッハハハッ!おかしー!みずきの彼女でーすっなんてな」 ヨシの様子に大ウケのアキラ、わざとからかい振り向く。 「えっ!げっサクヤ!?」 驚きに一瞬空白になり、止まってしまう。 「ばっかでー」 それを見て笑いながら、馬鹿にするアキラ。 「ムッ!なんでここにお前がいるんだよっ!!」 怒って言い返す。 「別に、散歩してたらみずき見つけて寄ってみただけだぜ。あんたこそ何しに来たんだ?」 聞かれて思い出したように答える。 「あ、そうそう!みずき、テーマパークのタダ券手に入ったんだけど!一緒にいかねぇ?」 「え、」 券を見せながら誘っているヨシ。 「どれどれ、見せて?」 図々しく会話の中に入るアキラ。 「てめーにはカンケーねぇだろっ」 「いーじゃん、券何枚ある?」

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