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第1話

『穢らわしい。 ああ、なんと不愉快な事か……』 『ヴァイド様のお子でなければ食い殺していたのに……』 人の子など……… 人の子………吸血鬼の皆は俺を人の子だと言う。 けれど、人は俺を吸血鬼だと畏れ憎むから結局何処にも居場所などないのだ。 何処にもいけない。 存在すらも否定される。 世界はどうして不平等で優しくないのだろうか___? 「ん……ん………はぁ……」 首筋から滴り落ちる血、甘くて美味しいそれを夢中になって貪る。 吸血鬼の生きる糧だ。 そして首筋に突き刺さった牙を抜きとると傷口をペロリと舐めとる。 「もういいの?」 「ん……十分」 首から血を流す男、(あかざ)は彼の血を吸っていた少年、(かいり)の口から溢れた血を指で拭いその指をペロッと舐めとる。 藜は30代前半くらいだろうか? 落ち着いた雰囲気で美しい顔立ちをしている。 対する浬は13歳くらいでこちらも美しく可愛らしい顔をしている。 だがその可愛い顔には似つかわしくない鋭い牙が月の光が反射しキラリと輝く。 「藜は?」 「僕はいいよ。 お前が満足ならそれでいい。」 優しく笑う藜は浬の頭を撫でる。 吸血鬼の住まうこの世界。 人とは一定の距離を置き生きる彼等は時に人に紛れて、しかし人とは決して相容れない存在である。 彼等は人を餌のようにしか思っていない。 中には人に触れることすら嫌がる吸血鬼もいる。 そんな中でも人と交わり子を成す吸血鬼もいた。 その子供の一人が浬だ。 吸血鬼にも人にもなれない存在。 彼等はどうしようもなく居場所がない。 人に紛れて生きようが吸血鬼は寿命が限り無く長く若さを保ちながら長い時を生きている故に混血の彼等も長い長い時間を若さと共に生きている。 だから人と共に生きる事など出来ないのだ。

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