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第24話 原点

   別れる?付き合えないなら別れると言われても、今現在つきあってさえいない。瑞樹は何が言いたいのだろうか。  「どういう意味……」  「俺をみて答えて。奏太、俺と付き合ってください」  「無理だから」  「じゃあ、きっちり俺に諦めさせてよ 」  どうやって?付き合ってもいないのに、諦めさせろ、別れるなどと言われても……スタート地点がないのにゴールはどこだと聞かれているようだ。  「奏太?……本当にもう俺じゃない?今、好きな人がいるのか?」  「……」  「無理強いするつもりはない、けど……」  逃げようとすると、腕を強くつかまれた。  「待って」  「離して、俺にはもう係わらないほうが良いんだ」  「……係わらない方がいい?係るな……じゃなくて?」  ドアのノブにかけた手を上から抑えられた。  「奏太、やっぱお前面倒だな、ちゃんと言葉にしろよ。……明日付き合え、一緒に戻ろう」  「……どこに?」  「俺たちの原点、出会った場所。お前を連れて行きたいところがあるし。ここに戻ってくる時に結論出してくれればいい」  「結論って……」  「それは奏太、お前次第。もしもその時、奏太が俺を要らないって思ったら……そしたら。後八日頑張って、それでもだめな時の最終手段にと思っていたけど、その前にお前またにげちゃうもんな」  そうしたら瑞樹が俺の事を諦める?  瑞樹は知らないだろうけれど本当は諦めきれてないのは、俺なんだ。瑞樹に別れると言われて、身体が震えているんだ。  原点に戻るって……何がしたいのだろう。  そもそも俺たちの原点って、何?  あの街にあるのは淀んだ過去と消せない未練だけ。眩しい想い出は何もないというのに。  「何しに行くのか分からない……」  「奏太にどうしても見せたいものがある、奏太はきちんと知らなきゃならない。それだけ」  「何を….…」  それっきり瑞樹は黙ってしまった、だから俺も何も言わない。  「とりあえず、帰る」  「駄目、帰さない。大丈夫、無理にどうこうしようと思ってるわけじゃないんだ」  「着替えもないし……」  「そこ、俺の服着て。下着なら新しいのコンビニで買えばいい、行こう」  手を引かれて立ち上がる。その手の暖かさに、瑞樹の手の暖かさに……違う、勘違いしないようにしなくちゃいけない。  自分の立場をわきまえる。それが大切。手に入れなければ、失うことはない。最初から持っていないものを失くすことはないから。  手に入れてしまうと、失うことが怖くて何もできなくなるんだ。だから、二度とこの手にはしない。そう決めたはず。

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